株式会社大橋時計店「創業130年 豊かな〝時の文化〟を提供」代表取締役社長・大橋瑠里氏

─社長に就任され、一年が過ぎました。

大橋　社長に就任したのは2022年9月。ちょうどコロナ禍から人流が戻りつつあった時期です。コロナ禍から取り組んだ当店3階のラウンジを貸し切りにして楽しむ予約制イベントや、昨年は高級宝飾ブランドの世界感を感じていただく若いお客さま向けのイベントなどを実施しました。全国の専門店の中でも比較的早い取り組みだったのですが、多くのお客さまにおいでいただきました。今やインターネットで何でも買える時代ですが、実際に手に取って商品を見つける喜び、店に入った瞬間の香りや音楽など、五感に響く専門店ならではの空間づくりを大切にしたいと思います。

─昨年10月、1階の「カルティエコーナー」をリニューアルされたそうですね。

大橋　店内に入った瞬間の高揚感を楽しんでいただきたいと、高い天井を生かしてシャンデリアを配置しました。フランス本社に相談して実現したオーダーメードの仕様です。高級時計は男性が身に付けるイメージがありますが、これからの時代はキャリアを重ねる女性にもファッションの一部として上質な時計やジュエリーを楽しんでいただきたいと思います。時計は人生の節目に贈る機会も多く、人と人をつなぐ絆の証しでもあります。当社では一緒に大切な時を歩んでほしいと、若いカップルに「婚約時計」のご提案もしています。

─今年2月に創業130周年を迎えられます。

大橋　1872(明治5)年、江戸時代に使われていた太陰太陽暦を廃止し太陽暦が国の暦として採用されました。同時に現在の時刻制度が定められ、わが国で西洋的な時間の概念が用いられるようになりました。当社はそれから約20年後の1894(明治27)年に熊本で創業し、130年という年月を経て今があります。初代の大橋善治郎は時計の修理技術を習得し、その技術を伝えることに力を尽くしました。3年前に新卒採用で入社した社員が当社では初となる「ウオッチコーディネーター」という資格を取得。豊富な専門知識を備えた時計販売のプロフェッショナルとして、初代からの文化をつないでくれているような気がしています。新卒採用は若い感性を店舗運営に生かしたいと、3年前から毎年実施しています。先輩から後輩への社内リレーションが構築されつつあり、人材育成の大切さを全社員が心に留めています。一人一人のお客さまに丁寧に向き合うという創業当初からの思いを胸に、豊かな“時の文化”を熊本の中心地から届けていきます。