袴田巌さん獄中書簡

 「僕は犯人ではありません。僕は毎日叫んでいます」。1966年の静岡県一家4人殺害事件で逮捕、起訴され、獄中で48年間過ごした袴田巌さんは家族に宛て、こう書いた。長い拘束生活中、袴田さんは毎日のように手紙やはがきをしたためた。無実の訴えは届かず、死刑が確定。端正な筆致は年月を追うごとに乱れ、内容は支離滅裂に。やがて姉との面会もできなくなった。

 2014年、裁判をやり直す再審が認められて釈放されたが、拘禁症状のためいまだ意思疎通は難しい。事件から58年。2024年9月、待ち望んだ再審無罪判決が言い渡される見通しだ。「冤罪」が袴田さんの心身をいかにむしばんだか―。数千枚に上る肉筆の獄中書簡からたどる。

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