問われる芸能事務所 優越的地位乱用が問題だ

7月31日 08:49

 多数のお笑い芸人を輩出している吉本興業に、国民の厳しい視線が注がれている。

 発端は6月上旬、振り込め詐欺グループの2014年のパーティーに同社所属の宮迫博之さん、田村亮さんらが会社を通さずに出席する「闇営業」でギャラを受け取っていたと写真週刊誌が報じたことだった。宮迫さんらは当初、報酬を否定したが、その後受領が判明した。写真誌は、暴力団関係者同席の会合に出た別のお笑いコンビの「闇営業」も報じた。

 不透明化・巧妙化する反社会的勢力と知らないうちに関わりを持つ可能性はあろうが、芸能人であれば警戒心を持ってしかるべきだろう。軽率のそしりは免れない。

 宮迫さんらは謝罪会見を開き、「テープ回してないやろな。(会見したら)全員首にするから」との岡本昭彦社長の発言を明らかにした。同社長も認めたこの発言は、上下の濃密な人間関係をちらつかせて相手を封じ込めるもので、パワハラ以外の何物でもない。

 1990年代に施行された暴力団対策法で、芸能界も反社会的勢力との関係に厳しく対処する時代となっている。今年5月には、企業にパワハラ防止策を義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が成立した。もちろん吉本興業も例外ではない。

 吉本興業は近年、事業を多角化し国や自治体と連携した仕事にも積極的だ。ならば、なおさらコンプライアンス(法令順守)が厳しく問われなければならない。後手後手に回る同社の対応や、社長会見を見る限り、社会的に成熟した企業とはとても思えない。早急に意識改革を進める必要がある。

 吉本興業は、多くを口頭で行っていた所属タレントとの契約について書面を取り交わす方針を決めた。公正取引委員会の有識者会議は昨年2月、「発注者(芸能事務所など)は書面で報酬や発注内容などを具体的に明示することが望ましい」とする報告書をまとめており、山田昭典事務総長は、吉本興業の契約に関し「契約内容が不明確なことで、優越的地位の乱用などを誘発する原因になり得る」との懸念を示していた。同社はこうした経緯を踏まえたのだろう。

 公取委は今月、男性人気タレントを多く抱えるジャニーズ事務所に対し、移籍したSMAPの元メンバー3人を出演させないよう、民放テレビ局に圧力をかけた疑いがあり、独占禁止法違反(不公正な取引方法)につながる恐れがあるとして注意した。

 移籍したタレントの扱いに口出しは許されず、人気タレントが特定の事務所を離れるとテレビに出られないのでは、芸能文化の質の低下にもつながりかねない。芸能や娯楽は本来観客やファンのためにあることを肝に銘じるべきだ。

 根底には、タレントと会社が対等でないという問題がある。米国には俳優やタレントが所属する労働組合があり、対等な関係づくりに取り組んでいる。日本もこうした仕組みを導入する時期に来ているのではないか。