11月15日付

11月15日 09:21

 芝居を見た観客が一体感に包まれる。舞台とホール全体が「もうすっかりあたたかいなみだにゆすれたのだった」。大妻女子大名誉教授の今村忠純さんが、井上ひさしさんの戯曲『父と暮[くら]せば』を見た時の様子を書いている。ゆすれるは揺れ動くの意味だろう▼宮沢りえさんと原田芳雄さんの主演で映画にもなり、戯曲として出版されてもいるから、繰り返しご覧になった方もいるかもしれない。被爆した娘と、死んだ父親、ふたりのユーモラスな広島弁で芝居は進む▼辛口で知られた作家の丸谷才一さんは「笑いと涙と、戦後日本の最高の喜劇」とそれを評した。思いきり笑わせ、かつ泣かせる。両方があってこそ喜劇の力は高まるのに違いない▼NHKの人気コント番組「LIFE!」の公開収録を見せてもらってそんなことを考えていた。会場の熊本学園大体育館に集まった視聴者は約千人。人吉市出身のタレント内村光良さんらが生でコントを演じ、事前に収録されたVTRも上映された▼収録には、熊本地震からの復興支援の意味もあったという。内村さんは事前のロケで、復旧中の熊本城を訪ねていた。コントには「上通」や「下通」も取り上げられ、地元のネタを満載。“熊本人”のプライドと郷土愛をくすぐり、笑わせると同時に、じんわりと泣かせた▼内村さんはライブの最後を「私たちは同じ空でつながっています。ともに歩んでいきましょう」と締めくくった。編集された番組は12月15日午後7時半から九州・沖縄でまず放送される。