風邪をひいたり、けがをしたりして病院に行った時に処方される薬。医師の指示通りに薬を調合し、患者に正しい飲み方や塗り方を指導するのが「薬剤師」。グリーン薬局(熊本市)で働き、在宅訪問や健康相談なども担う緒方徹さん(34)を取材しました。(河北希)
緒方さんの主な仕事は、病院からの処方箋を持って薬局に来た患者に薬を渡すこと。症状や困りごとなどを丁寧に聞き取り、一人一人に合う治療につながるよう「服薬指導」をします。
薬学部に入学当初は、製薬会社で薬の開発をしたいと考えていましたが、実習を通して薬局勤務にひかれたそう。「薬局はただ薬を渡すだけの場所ではないんです」。錠剤やシロップといった薬の形状、成分に配慮したり、地域の健康相談窓口となったり。患者に寄り添う治療を直接提案できるところに魅力を感じました。
病気やけがをしたりすると、どうしてもマイナスな気持ちになってしまうもの。そもそも健康に関することは、他人に打ち明けにくい悩みでもあります。だからこそ、緒方さんは「話しやすく、親しみやすい存在になろう」と意識しています。信頼感を抱いてもらうために、どんなことを聞かれても答えられる知識や技術を磨いています。
「在宅薬剤師」として通院が難しい患者宅に薬を届け、公民館などで健康相談に応じることも。また、学校での業務もあり、薬物乱用防止を呼びかける教室を開いたり、プールの塩素濃度や給食室の消毒などを確認したりしています。
医療の世界は、新しい治療法や薬が次々とうまれます。自分の知識を常にアップデートしなければならないため、日々勉強です。緒方さんは「薬局内にとどまらず、さまざまな活動を通じて地域医療全体に貢献していきたい」と自身の薬剤師像を語りました。
やりがい
患者はもちろん、その家族らも含めてサポートできる点にやりがいを感じています。以前、祖父が病気や転倒で要介護となり、在宅薬剤師として薬を管理したことがあります。祖父や家族が安心してくれました。この経験が、今の自分につながっています。
なるための道
高校卒業後、大学の薬学部や薬科大で6年間学びます。専門的な知識を身に付け、実務実習などもあります。必要単位を修得し、薬剤師国家試験に合格することで国家資格を得られます。それから、製薬会社や病院、調剤薬局などに就職します。
業界のひみつ
新しい薬ができるのに、10年以上かかるといわれています。2~3年かけて薬の〝種〟を探し、そこから効果や安全性の試験を繰り返します。そして、国から承認を受けたものが製造・販売されます。200~300億円の費用がかかるとも言われているんですよ。
なりたい人へ
薬は、わずかな量の違いでも体に大きな影響が出るため、細かい作業が得意な人に向いています。また、医師や看護師など医療関係者とのやりとりが多く、コミュニケーション力も必要。意外かもしれませんが、実は人と話すことが好きな人に合う仕事なんです。