お好み焼きで被災者を笑顔に…熊本地震8年、活動にピリオド 益城町・東無田地区で支援続けた佐渡さん 子どもら感謝の寄せ書き
「おいちゃんへ、毎年来てくれて、ありがとうございました。お好み焼き とってもおいしかったです」。熊本地震から8年の節目を迎えた14日、益城町島田の東無田地区の子どもたちが、ボランティアの男性に感謝の気持ちを伝えた。男性は今回を最後に同地区での活動に終止符を打った。
男性は広島市でお好み焼き店を経営していた佐渡忠和さん(72)。約120戸の7割が全半壊した同地区で、地震後の夏、住民にお好み焼きを初めて振る舞った。以来毎年訪れ、「自慢の味」を提供してきた。紙灯籠を集落の神社にともし、犠牲者を追悼する行事も住民とともに続けてきた。
ボランティア活動の原点は13年前の東日本大震災。「店は繁盛し、遊びもけっこうしていた。自分中心の人生を送っていたときに、目を疑うような災害。自分にできる炊き出しで人の役に立てれば」と東北入りを決意。笑顔でほおばる子どもたちの表情に、「人に寄り添うこと」が生きがいとなった。
今年元日の能登半島地震では石川県輪島市に入り、東北、熊本と同じようにお好み焼きを提供した。そこで実感したのは、ボランティアの数の少なさ。マンパワー不足を肌で感じ、「この地を活動の拠点にしよう」と店を3月末で閉め、同市に移住した。
一方で、数年前から極端な体力の衰えを感じている。「10年目まで東無田で活動したいと願っていたが、それまで体がもつかどうか…。復興も進み、住民の表情も明るくなった」。8年目を最後にしようと決め、14日、石川から約1200キロを自家用車で訪れた。
体への負担からお好み焼きは焼けなかったが、住民と協力して「石川 能登がんばろう」などと書かれた紙灯籠300個に火をともした。
「佐渡さんに8年分の感謝の気持ちを伝えましょう」。区長の宮永和典さん(73)が呼びかけた。「ありがとう」のメッセージが並ぶ寄せ書きを子どもたちが手渡すと、突然のサプライズに佐渡さんの目には涙が浮かんでいた。
中1の女子生徒は「地震に遭ったのは5歳のとき。不安だらけの中で食べた、お好み焼きの味は忘れません」と話した。「来るたびにみんなの笑顔が増え、喜びを感じていました。東無田での思い出は宝物。これからも石川からエールを送ります」と佐渡さん。夕闇に浮かぶ「ともに 4・14」の灯籠の文字を目に焼きつけていた。(小野宏明)
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