旧宿泊施設「火の国ハイツ」進まぬ利活用 二重の法規制がネック 所有する熊本県、方向性さえ定まらず
熊本県が所有する旧宿泊施設「火の国ハイツ」(熊本市東区)の利活用が進まない。新型コロナウイルスの影響による売り上げ減や老朽化を理由に2021年6月に閉館して3年。土地にかかる法規制がネックとなり、活用の方向性さえ定まらない状態が続いている。
火の国ハイツは1975年、当時の雇用促進事業団が勤労福祉施設として開業。国の特殊法人改革を受け、2004年に県が出資する一般財団法人が購入した。九州自動車道の熊本インターチェンジに近く、県民総合運動公園に隣接。主にスポーツ関連の団体客や修学旅行生らが利用してきたが、新型コロナの影響で20年度の売り上げが前年度から7割以上減った。施設の老朽化もあり、県は「事業継続は困難」と判断した。
22年3月に法人は清算し、閉館後の建物(鉄筋コンクリート4階建て、延べ床面積約7千平方メートル)や、県有地(約1ヘクタール)の取り扱いは県が検討することになった。
利活用が進まない理由には都市計画法に基づく二重の制限がある。一つは「都市計画公園」の区域内にあり、公園施設以外の利用ができない。もう一つは、「市街化調整区域」に位置するため、公益上必要なものに建築物の設置は限られる。区域変更は熊本市の都市計画審議会に諮る必要があり、長期間かかるという。
閉館前後は民間企業から10~20件ほど利活用や土地売却の問い合わせがあったが、県は「方針を決めていない」と回答。現在も「年数件の問い合わせがある」(労働雇用創生課)ものの、利活用を巡る庁内の検討は開発制限を理由に足踏みを続け、具体化する気配はない。
一方で、安全確保のための建物補修や敷地の草刈りなどで年間100万~200万円の維持管理費がかかっている。
スポーツ観戦でよく運動公園を訪れる熊本市中央区の自営業男性(53)は「せっかく運動施設と隣接しているのに、活用しないのはもったいない。コロナ禍も落ち着いた今、研修スペースや入浴、団体宿泊などの需要はあるのではないか」と話す。
県商工労働部の三輪孝之部長は「建物の解体には数億円単位の費用がかかる。現実的には改修し、法規制に沿う形で宿泊・研修に使うことが基本となるだろう。関係部局と検討を進めたい」としている。(樋口琢郎)
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