省力化へクリ収穫ロボット 熊本県立大など産学連携で開発中 特許も取得、製品化めざす

熊本日日新聞 2024年5月6日 18:11
末松電子製作所で試作した自律走行型クリ収穫機。電動けん引機(奥)に連結した収穫機(手前)が回転ブラシでいがぐりや実を拾い集める=4月25日、八代市
末松電子製作所で試作した自律走行型クリ収穫機。電動けん引機(奥)に連結した収穫機(手前)が回転ブラシでいがぐりや実を拾い集める=4月25日、八代市
クリ収穫機を開発している熊本県立大の松添直隆教授
クリ収穫機を開発している熊本県立大の松添直隆教授

 熊本県立大や熊本高専、末松電子製作所(八代市)などが2022年度から連携し、自律走行型のクリ収穫ロボットの開発に取り組んでいる。農園に落ちた実やいがぐりを回転ブラシで挟んで効率的に集める独自技術を考案し、特許を取得した。熊本はクリの収穫量が全国2位。農家の高齢化によって省力化は急務で、数年内の製品化や将来的な輸出を目指している。

 産学連携をまとめる県立大の松添直隆教授(農学)によると、開発中のロボットは家庭用のロボット掃除機に似た構造だ。車輪が付いた機体に画像認識用カメラや光学センサーを備え、農園に並ぶクリの木に張ったQRコードに似た目印を読み取るなどして自分の位置を割り出しながら、あらかじめ決めたルートに沿って走行。回転ブラシを使い、落果を拾い集める。一定量を集めると、定位置のコンテナに荷降ろしする。1時間に5㌃を巡回する速度が目標だ。

 農業・食品産業技術総合研究機構から24年度まで計約8千万円の支援を受けて試作を重ねている。2月に山鹿市の農園でテストすると、「県外で導入されている既存の収穫機より回収率が良い」(市農業振興課)といった評価を受けた。主な課題は起伏や狭い農地への対応という。

 日本国内のクリ収穫量は1万5600トン(22年)。人気の菓子原料で、この数年で単価は3倍程度に上がっている。一方、世界の生産量は日本の100倍を超える規模で増加傾向とされ、収穫機のニーズが有力産地の中国や欧州などにもあるとみている。

 製品化は末松電子製作所が担い、比較的安価な電動アシスト付きの手押し式収穫機も用意する方向だ。販売価格は生産コストの削減を進めながら、今後決めていく。同社は農業用電気柵の製造を手がけているが、新分野の開拓を目指す。松添教授は「作業負担が減る収穫機を広く普及させ、国内外の農業や地域経済の活性化に貢献したい」と意気込む。(猿渡将樹)

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