〝県産ピザ〟で冷食事業参入 「廃校」拠点、規格外の野菜活用 カット野菜製造のトーヨー(八代市)

熊本日日新聞 2024年5月6日 06:05
トーヨーの加工工場で手作りされた冷凍ピザ。八代産トマトなど県産食材を使用している=4月、八代市東陽町
トーヨーの加工工場で手作りされた冷凍ピザ。八代産トマトなど県産食材を使用している=4月、八代市東陽町

 カット野菜製造のトーヨー(八代市東陽町)が、規格外の野菜を使った手作りの冷凍ピザの製造・販売に乗り出した。新型コロナウイルス禍で家庭で過ごす「巣ごもり需要」の拡大を受けて冷凍食品事業に参入。昨年末からインターネットでの販売を始めた。商品の開発場所には、閉校した地元の小学校を選んだ。

 「ソースは丁寧に塗りましょう」。4月上旬、白い作業服に身を包んだパート従業員らが声をかけ合いながら、冷凍ピザを一つ一つ作り上げていた。

 かつて子どもらの元気な声が飛び交っていた校舎。トーヨーは2013年に閉校した旧河俣小を市から賃借し、1階部分を改修した。家庭科室は食品加工の「かこうしつ」、校長室を凍結機を備えた「とうけつしつ」として使用。本社に近い、この「河俣工場」が新規事業の本拠地となっている。

 冷凍ピザの製造を始めたのは23年10月。現在は八代産のはちべえトマトをペースト状にして塗った「マルゲリータ」、東陽特産のショウガをトッピングした「しょうがネーゼ」など5種を手がけている。

 本業であるカット野菜商品の製造過程では、使わない野菜の切れ端が生じる。それを廃棄せず、ピザのソースなどに有効活用。県産の素材の風味を生かすため、薄めの生地を採用した。

 直径24センチ、価格は一律1296円。表面に傷があって高値は付きにくくても、品質は確かな野菜を信頼できる農家から仕入れているという。営業部の船岡寛久さん(43)は「具材は県産食材を組み合わせていて、子どもにも安心して食べてもらえる。フードロスにも貢献できています」と自負する。

旧河俣小の家庭科室を改修した「かこうしつ」
旧河俣小の家庭科室を改修した「かこうしつ」

 商品開発で生きたのはカット野菜製造で培った冷凍技術。「冷凍ならば、全国へ配送でき、販路の拡大が見込める」と、冷凍ピザに目を向けた。今後はピザ以外の冷凍食品の開発も視野に入れている。

 冷凍食品には「追い風」が吹く。新型コロナ禍後も、巣ごもり需要は衰えを見せず、市場は拡大している。総務省の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの冷凍食品への年間支出額は拡大が続く。2018年の7768円からコロナ禍を挟み、23年は1万523円と5年間で1・3倍に伸びた。

 増加の一因について、日本冷凍食品協会(東京)は「23年は猛暑で外食する機会が減り、家庭での食事が増えた」と指摘。今後についても「物価が高騰する中、安く買えて、短時間で料理できる冷凍食品の需要は底堅い」とみている。

 大手の食品会社はホテルなどの業務用冷凍食品に目を向け始めた。料理人の不足が深刻になっており、それを補完する冷凍食品の手軽さに再注目。味の素(東京)は冷凍スイーツの新ブランドを立ち上げた。

 トーヨーも、ホテルや飲食店への提供を検討する。鳥越友公専務は「地元の農水産物は豊富で、付加価値の高い商品を届けられる。国内各地、そして海外への展開も目指したい」と先を見据える。(馬場正広)

 ◆トーヨー 八代市に合併する前の旧東陽村などが食品加工の第三セクターとして1990年に設立。2018年に飲食チェーンを手がける大分市の企業のグループ会社に譲渡された。従業員は約30人。冷凍ピザは23年末から、自社サイト「KAWAMATA LAB.」で販売している。

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