熊本産乾のり販売額、23年は過去最高174億円 有明海不作で単価上昇、小売価格に波及も
熊本県漁連(熊本市)は19日、2023年産の県産乾のりの累計販売額が過去最高の174億3567万円となったと明らかにした。有明海産の養殖ノリは佐賀、福岡を中心に前季から不作が続いてメーカーや商社の在庫が不足し、比較的堅調だった熊本産が高値で取引された。1枚当たりの平均単価は平年の2倍近くに伸び、22円5銭と最高値を記録した。
販売額は前季比31・2%増で、これまで最高だった16年産(133億6607万円)を大幅に上回った。平均単価は、過去最高だった前季をさらに3円78銭上回り初めて20円台に乗り、総販売額を押し上げた。総販売枚数は同8・7%増の7億9048万枚だった。
県漁連は今季の目標として出荷枚数8億枚、販売額92億円を掲げていた。
県漁連によると、有明海では今季、赤潮や少雨による栄養塩不足で、佐賀県と福岡県で生産が伸び悩んだ。全国で総販売枚数が50万枚を割り込んだ前季の影響もあって全国的に在庫は薄く、熊本では秋芽、冷凍網ともに初回入札で過去最高額となるなど価格が高騰した。
県漁連は「県全体でみると質は例年並みだが、荒尾市や熊本市の一部などで色落ちが見られた。ただ、佐賀や福岡と比べると海況の影響は少なく、一定の販売枚数を維持できた」と分析している。
この日、福岡県柳川市で有明海産の今季最後となる入札会が佐賀、福岡の漁業団体との3者合同で開催された。(馬場正広)
◆有明海産の2季連続不作 価格上昇は不可避か
今シーズンの有明海産養殖ノリは、記録的な不作だった前季に続き苦戦を強いられた。熊本は生産数を維持できたものの、「日本一」の座を昨年初めて明け渡した佐賀をはじめ、北部で海況悪化の影響が顕著に出た。全国有数の産地が2季連続の不作となったことで、家庭用や業務用の乾のり価格の上昇は避けられない見通しだ。
熊本県漁連などによると、2023年の有明海産は質、量ともに好調なスタートを切った。しかし、12月以降に海水温が高い状態が続いてプランクトンが平年より多く発生し、海中の栄養塩が奪われてノリの生育に影響した。熊本は12月末に冷凍網の張り込みができた一方、佐賀と福岡では作業が遅れ、品不足から入札を一時中止する事態となった。
全国漁連のり事業推進協議会の15日時点の集計では、佐賀の23年産の販売枚数は9億8600万枚。一方、22年産で日本一の座を佐賀から奪った兵庫は11億1300万枚で、入札が5月まで続くため今年もトップとなる公算だ。熊本県漁連業務部の舛元恵部長は「有明海全体でみると、悪い状況。海況の変化で、養殖ができない漁場も出てくるのではないか」と危惧する。
有明海産の不作の影響は、消費者の財布も直撃しそうだ。のり加工大手は軒並み、家庭用商品の価格や規格改定を検討中。白子のり(東京)は6月に12~18%の値上げを予定している。
熊本産は業務用が主力で、熊本市のメーカーの担当者は「在庫不足が続けば、コンビニなどのおにぎりにのりが使われなくなる可能性もある」と心配する。小売りの有明のり研究所(同市)の嶋田由美子代表取締役は「質が良くないのりにも高値が付く。『宝の海』と呼ばれた有明海を取り戻せるのか不安だ」と語った。(馬場正広)
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