背伸びして、好奇心育んで 「子ども大学」県内で開校 こだわり「いのち学」
子どもたちが大学キャンパスで授業を受ける「子ども大学」が3月、熊本県内で〝開校〟した。熊本県立大3年の宮津航一さん(20)=熊本市東区=と、同市の慈恵病院の元看護部長田尻由貴子さん(74)=西区=が立ち上げた「子ども大学くまもと」。子どもたちに少し「背伸び」して講義を受けてもらい、知的好奇心を育んでいく取り組みで、全国でも進んでいる。
宮津さんは幼少期、親が育てられない子どもを匿名でも預かる慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」に預けられ、熊本市内の養親のもとで育った。生い立ちを2022年3月に公表。その後田尻さんとともに構想を温め、自ら理事長に就いた。
■心満たす環境
初回は3月中旬、東区の東海大熊本キャンパスであった。国連開発計画親善大使で俳優の紺野美沙子さんが特別講演。小学生と保護者ら約200人を前に、原爆で息子を失った母親の手記を朗読し、命や平和の大切さを語りかけた。
「命」は宮津さんが、自身の経験からこだわるテーマだ。今後も命の大切さや性教育に関する内容を「いのち学」と呼び、無料講座を開いていく。次回は8月に開く予定で、「家庭環境で差別されることなく、平等に子どもたちの心が満たされる環境を与えたい」と話す。
初回の講義で宮津さんは「将来に夢と希望を持ち、自分自身の可能性や視野を広げられる機会を提供したい」とあいさつ。積極的に質問する子どもたちの姿を「活発に議論に参加してくれた」と満足そうに見つめた。
■人生を変える
子ども大学は08年に埼玉県で始まり、全国で広がっている。「子ども大学くにたち」(東京)を設立したジャーナリストの稲葉茂勝さん(70)も登壇。「大学の教室で大学レベルの授業を受ける。埼玉県には現在60近い子ども大学がある」と紹介した。
もとはドイツで始まった。子どもにとっては「大人の世界」であるキャンパスに入り、高揚感の中で授業を受ける。専門家も子どもの疑問に真摯[しんし]に答え講義する。「くにたち」では、理科で習う酸化と還元のテーマを原爆にまで発展させるなど、教科書を使った授業にはない「自由さ」を重要視しており、稲葉さんは「わずかしか内容を理解できなかったとしても、その経験が子どもの今後の人生を変えるきっかけになる」と強調する。
大学生らがサポーターとして運営にも関わる熊本の特徴も挙げ、「全国的にも注目されている」と稲葉さん。「各地の『子ども大学運動』を引っ張る存在になってほしい」とエールを送った。(丸山伸太郎)
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