背伸びして、好奇心育んで 「子ども大学」県内で開校 こだわり「いのち学」

熊本日日新聞 2024年4月12日 06:05
「子ども大学くまもと」で講演した稲葉茂勝さん(中央)と宮津航一さん(左)、田尻由貴子さん=3月、熊本市東区
「子ども大学くまもと」で講演した稲葉茂勝さん(中央)と宮津航一さん(左)、田尻由貴子さん=3月、熊本市東区

 子どもたちが大学キャンパスで授業を受ける「子ども大学」が3月、熊本県内で〝開校〟した。熊本県立大3年の宮津航一さん(20)=熊本市東区=と、同市の慈恵病院の元看護部長田尻由貴子さん(74)=西区=が立ち上げた「子ども大学くまもと」。子どもたちに少し「背伸び」して講義を受けてもらい、知的好奇心を育んでいく取り組みで、全国でも進んでいる。

 宮津さんは幼少期、親が育てられない子どもを匿名でも預かる慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」に預けられ、熊本市内の養親のもとで育った。生い立ちを2022年3月に公表。その後田尻さんとともに構想を温め、自ら理事長に就いた。

 ■心満たす環境

 初回は3月中旬、東区の東海大熊本キャンパスであった。国連開発計画親善大使で俳優の紺野美沙子さんが特別講演。小学生と保護者ら約200人を前に、原爆で息子を失った母親の手記を朗読し、命や平和の大切さを語りかけた。

 「命」は宮津さんが、自身の経験からこだわるテーマだ。今後も命の大切さや性教育に関する内容を「いのち学」と呼び、無料講座を開いていく。次回は8月に開く予定で、「家庭環境で差別されることなく、平等に子どもたちの心が満たされる環境を与えたい」と話す。

 初回の講義で宮津さんは「将来に夢と希望を持ち、自分自身の可能性や視野を広げられる機会を提供したい」とあいさつ。積極的に質問する子どもたちの姿を「活発に議論に参加してくれた」と満足そうに見つめた。

「子ども大学」の講座で小学生に語りかける稲葉茂勝さん=3月、熊本市東区
「子ども大学」の講座で小学生に語りかける稲葉茂勝さん=3月、熊本市東区

 ■人生を変える

 子ども大学は08年に埼玉県で始まり、全国で広がっている。「子ども大学くにたち」(東京)を設立したジャーナリストの稲葉茂勝さん(70)も登壇。「大学の教室で大学レベルの授業を受ける。埼玉県には現在60近い子ども大学がある」と紹介した。

 もとはドイツで始まった。子どもにとっては「大人の世界」であるキャンパスに入り、高揚感の中で授業を受ける。専門家も子どもの疑問に真摯[しんし]に答え講義する。「くにたち」では、理科で習う酸化と還元のテーマを原爆にまで発展させるなど、教科書を使った授業にはない「自由さ」を重要視しており、稲葉さんは「わずかしか内容を理解できなかったとしても、その経験が子どもの今後の人生を変えるきっかけになる」と強調する。

 大学生らがサポーターとして運営にも関わる熊本の特徴も挙げ、「全国的にも注目されている」と稲葉さん。「各地の『子ども大学運動』を引っ張る存在になってほしい」とエールを送った。(丸山伸太郎)

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本の教育・子育て