【この人に聞く・熊本地震1年③】東海大学学長の山田清志さん 再建目指す阿蘇キャンパス 「まずは安全性の精査を」
東海大農学部阿蘇キャンパス(南阿蘇村)は熊本地震で甚大な被害を受け、今も立ち入りが制限されている。地元で暮らしていた学生約750人は転居し、授業は熊本キャンパス(熊本市東区)で行われている。農学部や阿蘇キャンパスの今後について山田清志学長に聞いた。(清田幸子)
-阿蘇キャンパスを現地で存続させ、熊本キャンパスと併用しながら再建を目指す方針を1月24日に表明されました。
「発表前の1月5日に蒲島郁夫知事に会い、南阿蘇村から完全撤退はせず、当面は実習場を中心とした活用を考えるという方針を説明した。知事から『ご配慮ありがとうございます』と言っていただいたので、完璧ではないものの、一つの関門はクリアしたと受け止めた」
「阿蘇キャンパスは1号館の下をはじめ、至る所に断層が走っていることが専門家によって確認されている。少なくとも断層の上に建物を新設するのは困難で、全面的な再建は不可能という結論になった」
-地元は全面的な再建を強く望んでいます。
「今後の具体的な計画については県や地元の意見を伺うことになると思う。ただ、われわれの最大の優先事項は学生の教育と研究の確保に資するかどうか。そこから判断すると、農学部は熊本キャンパスを拠点として講義・授業を実施し、阿蘇キャンパスは使用可能な部分を再整備し、農場や放牧地などを中心に実習など専門授業に使うという結論になった」
「農学部は8割が県外からの進学。幸いにも2017年度はほぼ定員の新入生を迎えることが出来たが、キャンパスの安全性を懸念する保護者がシビアな判断をされる可能性もある。『ちゃんとした実習をしたい』という在校生の声にも応える責任がある」
-阿蘇キャンパスの再開はいつごろになりますか。
「検討はしているが、まだ具体的な計画は白紙の状態。キャンパスの安全性も精査しなければならず、時期が見通せる状態ではない。早くても再開のための工事が始められるのは19年度だろう。通学に必要な国道57号やJR豊肥線も寸断され、復旧の見通しも立っていない。そういった周辺環境にも左右される」
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