【連鎖の衝撃 避難編①】 公園へ高台へ…逃げ惑う 「本震」激しい揺れ 855カ所に18万3千人
4月16日未明。熊本市中央区の公園や校庭は、脅[おび]えきった表情の人々であふれていた。
午前1時25分、同市を襲った震度6強・6弱の「本震」。相次ぐ激しい揺れは、14日に発生した熊本地震の「余震」を警戒していた市民の心身に恐怖を刻み込んだ。少しでも安全な場所へ-。人々は建物を出て、屋外へと向かった。
草葉町の白川公園は、逃げてきた人であふれた。本山町の江南中には、「周りに何もない方がいい」と校庭の真ん中で身を寄せる夫婦がいた。いったん体育館に入ったが、余震の度に子どもを抱えて飛び出していた主婦坂本和江さん(33)は「もう地震はいや」とこぼした。
◇ ◇
本震発生直後、海岸線に近い西区は、高台を目指す人でパニック状態だった。本震からまもなく発令された「津波注意報」。城山[じょうざん]の自宅にいた男性会社員(50)の脳裏には、東日本大震災の惨状が浮かんでいた。
「とにかく高いところへ逃げようと、家族と車に乗り込み、高橋稲荷[いなり]神社のある城山[じょうやま]を目指した。車が数珠つなぎになった道を抜けてたどり着くと、山は先着の車で埋まっていた」。50分ほどして注意報は解除された。さらに数十分待って山を降りると、逃げる途中で乗り捨てられた車が道をふさぎ、渋滞はまだ続いていた。
◇ ◇
16日だけで、200回を上回る余震があった。未明に自宅を飛び出した人たちの多くはその夜、近くの学校や公共施設に設けられた避難所に身を寄せた。
県の調べでは、17日朝には県内の855カ所に約18万3千人が避難。その半数以上が、熊本市民だ。このほかに、スーパーや自宅の駐車場などで車中泊をした人なども多数いたはずだが、「避難者は何人になるのか、避難の全容は今も分からない」と市政策局の古庄修治局長。
自主避難所が自然発生的に増え、多くの車中泊者が生じることも、住居に被害を受けた人の数をはるかに上回る市民が避難者となることも“想定外”だった。何より、余震の恐怖が市民を支配した。本震から1週間後の23日、市が避難者3万7362人を対象に実施したアンケート(回収率52・5%)では、避難所にとどまりたい理由として「余震による不安」を挙げる人が82・7%を占めた。
5月19日、地震は1500回を超えた。終わりの見えない避難生活は、今も続く。(石本智、馬場正広、富田ともみ)
◆ ◆
14日の「前震」、16日の「本震」と最大震度7の激震が続いた県内では、多くの人々が避難生活を送った。「熊本地震 連鎖の衝撃 避難編」では、その中で直面したさまざまな混乱、危機、そして希望を、熊本市を中心に振り返る。
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