チッソ債務、熊本県が返済猶予 21~24年度分17億円

熊本日日新聞 | 2021年3月17日 09:42

 熊本県は16日、水俣病未認定患者救済のための原因企業チッソ(東京)に対する貸し付けについて、2021~24年度の計17億2千万円の返済を25年度まで猶予する方針を明らかにした。チッソの業績回復を待って、25年度に猶予分の一括返還を求める。

 1995年の政治決着でチッソは、未認定患者に1人当たり260万円などを支給。その原資として、国の補助金と県債を借り入れた。このうち、国の補助金部分は、2000年の閣議了解に基づくチッソへの抜本支援策で返済を免除された。残る県債部分の120億3400万円は、17年度から45年度まで毎年約4億3千万円ずつ返す計画だった。

 しかし、主力の液晶事業などの不振でチッソの経営環境は悪化しており、事業子会社JNCなどの連結決算は20年3月期まで4年連続で赤字。20年度分までは計画通り返済予定だが、昨年12月には国と県に返済猶予を申し入れ、国も、県に協力を要請していた。

 猶予期間は、チッソが策定した業績改善計画の期間。計画では、構造改革などにより24年度に55億円の経常利益を見込んでいる。

 県議会の経済環境常任委員会で報告。県からチッソへの貸し付けは「水俣・芦北地域振興財団」を通じて実施しており、財団から県への返還はもともと、チッソから財団への返済が全て完了した後の予定。このため県環境政策課は「今回の猶予による県財政への影響はない」と説明した。(内田裕之)