経常利益55億円めざす 24年度、チッソが改善計画

熊本日日新聞 | 2021年3月13日 09:59

 水俣病の原因企業チッソ(東京)は12日、業績改善に向けた中期計画(2020~24年度)を公表した。主力の液晶事業での構造改革や水力発電事業の収益安定化が柱。患者補償や公的債務の返済を継続できる水準として、最終年度に事業子会社JNCの連結決算で55億円の経常利益を確保するとした。

 JNC単体の20年3月期の経常利益は32億円で、00年に閣議了解された政府の抜本支援策が目標とする53億円を大幅に下回ったことから、政府が昨年5月、チッソに業績改善計画の策定を要請していた。

 中国メーカーとの価格競争で売上高や利益が減少している液晶材料事業は、高画質の8Kや車載用といった付加価値が高い分野に資源を集中させる。韓国の製造拠点閉鎖や国内拠点の集約も進め、固定費の削減を図る。

 熊本県内を中心とした全13カ所の水力発電所は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を活用して収益拡大を目指す。採用抑制や賞与削減も進める。期間中の設備投資は、水力発電施設の更新など約430億円を見込んだ。

 これらの取り組みで、20年3月期に7億円の赤字だった経常損益は、24年度に55億円の黒字転換を目指すとした。

 一方、水俣製造所については「重要な戦略拠点」とする位置付けを維持。業績改善後は地元の雇用創出を図ると明記した。

 同社は「絵に描いた餅に終わらせない。自助努力を前提に、患者補償や地域経済への貢献など責務を果たしていきたい」と強調している。

 同日は、環境省など関係省庁と熊本県が連絡会議を持ち回りで開き、計画を最終確認した。(福山聡一郎)