川辺川ダム、貯水量変えず 国、利水分を治水に転用

熊本日日新聞 | 2020年12月18日 10:10

 7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策を巡り、国土交通省が現行の川辺川ダム計画の貯水容量(1億600万トン)を維持した治水専用の流水型ダムの試算を熊本県や流域市町村に提示することが17日、分かった。多目的ダムからの変更で、農業や発電用などの利水容量を活用して治水能力を上げることが可能になる。実現すれば流水型ダムで国内最大となるが、環境への影響などからダムの規模が今後の議論の焦点となる可能性もある。

 18日に県庁で開かれる流域治水協議会の第2回会合で示す。

 ダムの構造については、本体下部の穴あき部分にゲートを取り付け、大雨時にゲートの開閉で洪水調整を可能とする案を示す見通し。国は7月豪雨で球磨川中下流域の流量が上流域より早く増加したと分析しており、これに対応するためゲート操作を想定した新たな洪水調節ルールも検討している。

 国は治水対策の目標を7月豪雨に対応できる水準とする方針。流水型ダムのほか、遊水地整備、大規模な河底掘削、川幅を広げる引堤などの対策を最大限実施した場合の治水効果を試算した。その結果、球磨村や八代市坂本町では一定の浸水が生じ、人吉市では堤防の越水は防げるものの、ぎりぎりまで水位が高くなる結果となった。

 また、7月豪雨の雨量を超えた場合の試算では、雨量が1・3倍以上となった時に流水型ダムで異常洪水時防災操作(緊急放流)に移行するとした。

 国交省によると、流水型ダムは国内で5基が完成し、9基が建設中。7月豪雨災害を受け、蒲島郁夫知事が「住民の命と環境の両方を守る」として国に建設を要請していた。(野方信助、内田裕之、高宗亮輔)