水俣病立証、「疫学」手法批判 患者会側証人の大学教授

熊本日日新聞 | 2020年12月5日 10:14

口頭弁論を前に熊本地裁前で集会を開く水俣病不知火患者会の原告ら=4日、熊本市中央区
口頭弁論を前に熊本地裁前で集会を開く水俣病不知火患者会の原告ら=4日、熊本市中央区

 水俣病特別措置法による救済の対象外となった水俣病不知火患者会の会員らが国と県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟は4日、熊本地裁で被告側証人の尋問があり、公衆衛生学が専門の中村好一・自治医科大教授(63)が、水俣病被害を立証するために原告側が使った「疫学」の手法を批判した。

 疫学は、集団を対象に疾病の要因を分析する科学分野の一つ。原告側が提出した岡山大大学院の津田敏秀教授(62)の意見書は、疫学の手法で、不知火海沿岸で手足の先に感覚障害のある人の割合を他地域と比較した結果、「症状の原因がメチル水銀である確率が9割以上」とした。

 中村氏は「疫学は集団を観察、分析するものであって個人への適用が前提ではない」と指摘。「津田氏の分析は、居住地域で集団をつくった点や、ベースとなる過去の調査の選び方に問題がある」と証言した。

 原告側が「客観的な毛髪水銀値などが残っておらず、集団をくくるのは居住地域しかない」と反論したのに対し、「聞き取り調査などあらゆる情報を集める努力が必要」と答えた。(堀江利雅)