紙面から広がる関心 熊本県内5校で「NIE公開セミナー」

12月26日 10:35

新聞記事やグラフを読み解き、考えをまとめたノートを見ながら意見を交わす万田小の児童たち=荒尾市
消費税増税に関する記事を読み、班ごとに意見を交わす阿蘇中の生徒ら=阿蘇市
新聞を頭に載せた運動を楽しむ袋小の1年生=水俣市
6年の道徳の授業で、ラグビー日本代表の記事を児童に示す袋小の有働加織教諭=水俣市
地域の魅力や課題を考える「球磨地域学」で、ポスターセッションに取り組む球磨中央高の生徒たち=錦町
阿蘇の循環型農業をテーマにした記事を使って授業をする北部中の野口哲教諭=熊本市北区

 教材としての新聞の活用法を探る2019年度のNIE(教育に新聞を)公開セミナーが10~12月、熊本県内の実践指定校のうち、2年目を迎える5校で相次ぎ開かれた。県内の教育界と新聞・通信9社でつくる県NIE推進協議会が毎年開催しており15回目。インターネットなどの情報があふれる中、児童生徒の関心を高めようと工夫を凝らした新聞活用の最前線を紹介する。(西山美香、藤山裕作、林田貴広)

万田小(荒尾市) 主張の根拠を明確に

 新聞記事を使って自分の主張の根拠や理由を明確にしよう-。荒尾市立万田小は5年2組の国語科の授業を公開。児童らは記事やグラフをもとに、今の社会が「暮らしやすい」か「暮らしにくい」か、それぞれの立場で意見を交わし、多様な考えがあることを学んだ。

 題材には、小中学生の携帯電話の利用状況を調べ、高学年ほど親とSNS(会員制交流サイト)やメールを通じてやりとりする機会が増えていることを報じた記事を使った。

 児童からは「直接会ってコミュニケーションをとる機会が減っている」のを理由に「暮らしにくい」とした意見に対し、「遠く離れていても連絡できるので便利。暮らしやすいのではないか」との反論があった。

 橋本昌尚教諭(41)は「説得力のある理由を考えることが大切。一方だけではなく、さまざまな見方ができるようになろう」と呼び掛けた。

 報道機関や教育関係者を交えた意見交換では橋本教諭が、NIEに取り組んだ後の国語の全国学力・学習状況調査結果を紹介。「正答率が全国平均を上回る県平均に到達し、学力向上につながったと思う」と成果を強調した。(開催日は11月8日)

阿蘇中(阿蘇市) 消費増税影響を学ぶ

 阿蘇市立阿蘇中で公開された3年1組の社会の授業は「消費税増税 何がどう変わったのか?」がテーマ。新聞記事を「生きた教材」として活用し、生徒たちは増税の背景や影響、負担緩和策などを学び、日本経済への関心を深めた。

 生徒は、あらかじめ熊日など7紙に掲載された増税に関する記事を読んで学習。3~4人の班ごとに、分かったことや感じたことについて意見交換し、ホワイトボードに書き込んだ。

 各班を代表し、市原匠望[たくみ]君らが意見を発表。「店内で食べると10%、持ち帰りなら8%」「高齢者中心だった社会保障が子育て世代を含む全世代型になったことが分かった」などの声や「仕組みが難しい」「生活が苦しくなる人もいる」と注意点が挙がった。

 小島正明教諭(53)は幼児教育・保育の無償化やキャッシュレス決済など増税のポイントも解説。生徒らは「新聞で読み取る力を鍛えられた」「関心を広げられた」などと感想を述べた。

 公開授業を終えた小島教諭は「新聞は子どもたちと社会の接点になり、さまざまな意見を発見できる。教科書にはない利点ではないか」と結んだ。(開催日は12月6日)

袋小(水俣市) 自分の役割考える

 水俣市立袋小は、1~6年の全学級ごとにNIE授業を公開。新聞を使ったバランス感覚を学ぶ運動や、今年の流行語大賞に「ONE TEAM(ワンチーム)」のスローガンが選ばれ注目を集めた、ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表などが題材となった。

 体育館であった1年の体育の授業。児童たちは楽しそうに2人組で手をつなぎ、紙面を頭に載せて立ったり座ったり、新聞をおなかで押して走るリレーなどに挑んだ。

 6年の道徳の授業では、有働加織教諭(37)が、4年前の前回大会で南アフリカを破った日本代表の主将を務めた廣瀬俊朗選手にスポットを当てた。児童たちは、出場機会が少ない中、チームを支えた廣瀬選手の思いを想像。有働教諭は「廣瀬選手はなぜ、チームという集団を輝かせるために、自分は何ができるかを考えることができたのか」と一人一人に問い掛けた。 

 児童たちは、今大会に出場した「桜の戦士」31人のコメントを載せた記事も読み、学級や学校で果たす自分の役割を考えた。「チームの一員として、勝つためにサポートしたいと思ったから」などと、どんな状況でも目標達成に向け努力する思いをくみ取った。

 意見交流会では、今村浩・熊日読者・NIEセンター長が「新聞のひみつ」と題し講話。担当教師と児童、保護者代表らを交えた報告会もあり、6年の真野美桜[みお]さんは「新聞に興味がわいて、記事から新しい疑問も生まれてくるようになった」と話した。(開催日は11月22日)

球磨中央高(錦町) 地域学記事にヒント

 「若者のアイデアでいかに地域を盛り上げていくか」。県立球磨中央高(錦町)の公開セミナーは、地域の魅力や課題をテーマにした「球磨地域学」に、新聞の記事を活用した。2年生106人が24班に分かれ広用紙を掲示。記事やデータを貼り、質疑を受ける「ポスターセッション」形式で発表した。

 観光、医師不足、少子高齢化、空き家…。生徒たちが掘り下げた課題はさまざま。「くま川鉄道」についてまとめたグループは、利用客の低迷が続く同鉄道の活性化策を考えた。兵庫県内の無人駅を地元の中学生が清掃奉仕する記事を紹介。「駅周辺を美しくするだけでなく、駅周辺の観光地の認知度向上も必要だ」と強調した。

 日本の食文化の大切さを訴えるグループも。食料自給率などのデータを並べ、海外依存度の高さやコメの消費減少を指摘。健康食として和食の「一汁三菜[いちじゅうさんさい]」に注目した。西生皓[みひろ]さん(商業科)は「分かりやすいようグラフを配置するなど工夫した」と話した。

 授業後は教諭らが意見交換。「高校生らしい双方向型の発表」と評価する一方、「ネット情報が目立ち、新聞活用が不足気味」「出典を明確にすべき」などの課題が挙がった。(開催日は12月10日)

北部中(熊本市) 持続可能な農業探る

 国立教育政策研究所などからESD(持続可能な開発のための教育)研究指定を受ける熊本市立北部中。阿蘇地方に伝わる循環型農業を取り上げ、草原や農業を維持するための課題や自分たちにできることを探った。

 「記事からキーワードを探し、循環型農業を説明しよう」。2年1組の教室で、野口哲教諭(36)は、草原であか牛を飼育する農家の取り組みなどを伝える記事を示し問題提起。記事から情報を読み取り、図や表にまとめるのが授業の狙いだ。

 生徒38人は「野焼き」「地域ブランド」などキーワードを書き出し、タブレットで循環図を作成。農家の高齢化や野焼きの担い手不足を課題に挙げ、「阿蘇で取れたものを食べて農家を支えたい」「野焼きなど自然を守るイベントに参加したい」と発表した。

 大庭慧[けい]子さんは「新聞には深く掘り下げた記事が多く、教科書に載ってない情報や知識を得られた」。野口教諭は「NIEに取り組み、生徒たちの社会に対する関心や問題意識、課題解決力が間違いなく高まった」と手応えを語った。

 同校では給食時間に校内放送で気になるニュースを生徒が伝える「新聞内容発表」などに取り組んでいる。(開催日は10月18日)