球磨川治水 緊急対策の着実な履行を

01月29日 09:15

 昨年の7月豪雨で氾濫した球磨川の治水を巡り、国土交通省と県は26日、「緊急治水対策プロジェクト」の概要を公表した。河道掘削や遊水地整備など具体的なメニューを明示している。流域の人たちが少しでも安心して暮らせるよう着実な履行を求めたい。

 一方、治水の柱として支流の川辺川への流水型ダム建設も盛り込まれたが、規模や完成時期などは明らかにされず、流域治水の最終的な姿は、いまだ見通せない。論議の土台となる十分な情報提供も必要だ。

 プロジェクトは2020年度から10年程度で実施する。河道掘削は流下断面積を拡大し水を流す能力を向上させるもので、八代市坂本町や球磨村神瀬など5地区を想定。川を拡幅し新たな堤防を設ける引堤にも取り組み、球磨村渡で600メートルの区間で川幅を50メートル広げる。農地などを利用した遊水地整備では600万トンの洪水調節を見込む。一定区域の宅地をかさ上げし、堤防で囲む輪中堤も設ける。

 一連の治水策は、2008年に蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画白紙撤回を表明後、国、県と流域市町村が「ダムによらない」治水策を検討する中でも浮上したが実現しなかった。「空白」の12年間ともいえる中、豪雨災害が発生し、多くの人命と財産が失われた。

 熊日が昨年12月、被災者を対象に行った意識調査では、ダム建設よりも宅地・堤防のかさ上げや引堤、河道掘削など身近な治水対策を望む意見が多かった。その整備に道筋が示されたことは、住民にとって朗報といえよう。

 ただプロジェクトは、こうした治水策だけでは7月豪雨規模の大雨時に水害を抑えきれないとし、流水型ダム建設と県営市房ダムの治水機能の改良も明示した。ダム以外の全対策を実施した場合、人吉地点の水位は45センチ下がるが堤防を越水。ダム建設、改良が実現すると水位は2・5メートル低下し堤防を越えないと例示した。ダム建設が治水の要との姿勢を改めて見せた形だ。ところが具体的内容は「調査・検討ができていない」(国交省)として示されなかった。

 川辺川ダム計画が中止となった背景には、流域住民の環境への影響の懸念や、ダムによる治水への不信があった。流水型は洪水調整時以外は水をためず環境に配慮しているとされる。しかし同規模のダムの建設例はない。前述した被災者意識調査では、ダム推進を表明した知事の判断について支持、不支持が拮抗[きっこう]。民意の把握が十分でないとの声も5割弱を占めた。国、県は流水型ダムの環境への負荷や安全性などを検証し、流域住民に説明していく必要がある。

 流水型ダム完成まで10年以上かかる見通し。ダムがない状況でも安全を確保するため、被災者からは高台への宅地造成を求める声も上がっている。治水策は国、県、市町村でつくる協議会での論議にとどまっている。ダムの是非を含め、民意を丁寧にくみ取り、住民にとって最善の治水策を進めていくことが行政の責務である。

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