辺野古極秘合意 看過できない陸自の独走
01月28日 09:18
陸上自衛隊と米海兵隊が2015年に、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで極秘に合意していたことが明らかになった。米軍普天間飛行場の移転先として埋め立てが進む辺野古新基地と一体運用されるシュワブでの日米共同利用が実現すれば、基地の機能強化と恒久化につながりかねず、沖縄のさらなる負担増は避けられない。
辺野古移設は、沖縄の基地負担軽減が目的であったはずだ。政府はこれまで普天間の代替施設は「米軍専用である」との説明も続けてきた。こうした説明も沖縄の民意も無視した極秘合意は、文民統制から逸脱した経緯も含めて看過できない陸自の独走だ。
「日本版海兵隊」と言われる水陸機動団は18年、長崎県佐世保市の相浦駐屯地を拠点に発足した。
共同通信の取材によると、陸上幕僚監部が編成に向けた検討を始めたのは12年。最終的に三つの連隊(現2連隊)で構成し、一つは中国との緊張関係が続く尖閣諸島有事に備えて沖縄に置くと決めた。15年に防衛省全体の決定を経ないまま、当時の陸自トップが在日米海兵隊司令官と辺野古常駐構想に合意。陸自施設の計画図案などを関係先に示していたという。
辺野古常駐構想には、米海兵隊と陸自双方の思惑がある。これまで日米両政府が合意した海兵隊の再編案では、約1万人が沖縄に残り、約9千人がグアムなどに移る計画だ。しかし、海兵隊内部で、部隊削減に伴い重要拠点の沖縄で存在感が低下するとの懸念が台頭。陸自との共同利用を活路に、従来通りの基地機能を維持する方針にかじを切ったとみられる。
一方、陸自側も中国の海洋進出をにらみ、尖閣諸島に近く、V字形の滑走路2本など環境が整ったシュワブが、水陸両用作戦を展開する水陸機動団の拠点として最適と判断。複数の陸自幹部は米海兵隊の国外移転を念頭に「将来辺野古は実質的に陸自の基地になる」との本音を漏らしたという。
この問題については、27日の参院予算委員会でも取り上げられた。野党側の質問に対し、岸信夫防衛相は「政府として、そのような合意はない」としたが、陸自が作成した共同利用施設の計画図案があることは認めた。「(陸自と海兵隊の)やりとりは申し上げられない」とも述べたが、防衛省内部からも批判の上がるこの問題の詳細を明らかにして、説明責任を果たすべきだ。
沖縄県の玉城デニー知事はバイデン米大統領の就任に際し、「沖縄の過重な米軍基地の負担軽減のため、政府間同士の合意事項だけでなく、沖縄も加えた新たな協議の場をつくってほしい」と要望した。日米の両トップが変わった今、沖縄を加えた新しい議論の場を設け、地元が納得できる負担軽減策を模索してもらいたい。
今回の件で地元の不信感はさらに高まった。沖縄の思いを無視したやり方を続けていては、打開策など決して見いだせない。
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