脱ガソリン車 産業構造の変容へ道筋を

01月13日 09:33

 政府は昨年末、2050年の脱炭素化社会に向けたグリーン成長戦略の一環として、30年代半ばまでに軽自動車を含む乗用車を全て電気自動車(EV)やエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)などの電動車にする方針を発表した。

 「脱ガソリン車」を進め、走行中の車が排出する温室効果ガスを抑えるのが狙いだ。同時に、世界的にEV移行の流れが加速する中、国内自動車産業の競争力を維持するための政策転換でもある。

 ただ、現在の日本の車社会はガソリン車の使用を前提に成り立っている。その中核を電動車に置き換えるとなれば、充電スタンドの拡充などインフラ面も含む産業構造そのものが変容を迫られよう。政府は変容をスムーズに進めるための道筋を早急に示し、新しい車社会へ備えるべきだ。

 政府は英国が将来的に規制の対象にする意向を持っているHVを電動車に含めている。エンジンを使用する以上、排ガスをゼロにはできないが、EVのコストの高さや、HV開発での日本メーカーの蓄積、エンジン関連部品メーカーなどへの影響を考えれば、今の時点では現実的な判断だ。

 とはいえ、脱炭素化に向けて、各国の消費者や規制当局のHVに対する考え方が今後さらに厳しくなることは間違いない。現在、優位に立っているからといってHVに頼るのは危うい。

 自動車産業は日本経済の屋台骨だ。世界市場で戦える態勢を保ちたい。各メーカーはEVのコスト高要因となっている蓄電池の技術革新を急ぎ、HV抜きでも各国のライバルと勝負できるような経営戦略を練る必要がある。

 しかし、EVは構造上、排気系や燃料系などの部品が不要なため、急速な普及を強いられれば部品メーカーには強烈な逆風が吹く。加えて、ガソリン車がなくなれば給油所はどうするのか。メーカー系以外の中古車販売、整備工場などにも目配りが必要だ。

 脱炭素化に異論はないが、裾野が広い自動車関連産業をどう導くのか、政府の戦略からは見えてこない。人材や資金などの経営資源を電動車関連分野へ円滑に誘導する必要がある。業者の「自助」だけでなく、EV技術の慣熟支援や激変緩和措置も欠かせない。政府には、自動車に携わるすべての人たちを安心させるメッセージを求めたい。

 ガソリン車は長らく車社会の主役として活躍し、単なる移動手段にとどまらず、文化としても国民に根付いている。“相棒”として1台を大事に乗り続ける人や旧車ファンなどは、「脱ガソリン車」という掛け声だけでは容易には電動車に移行しないだろう。

 こうした層に訴えるためにもエネルギー政策の転換が必要ではないか。EVの製造や充電時に使う電力の多くが石炭火力で生み出されている間は、乗り換えを促す説得力に欠けるからだ。再生可能エネルギーの導入拡大を確実に進めてもらいたい。

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