韓国の慰安婦判決 国際法上の法理に反する

01月10日 08:12

 韓国のソウル中央地裁は、元従軍慰安婦の女性12人の訴えを全面的に認め、日本政府に1人当たり1億ウォン(約950万円)の賠償支払いを命じる判決を下した。元徴用工問題などで悪化した日本と韓国の関係を、いっそう冷え込ませる事態である。

 日本政府は、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の「主権免除」の原則があるとして、この訴訟に関与してこなかった。だが判決は、慰安婦動員を「計画的、組織的、広範囲に行われた反人道的犯罪行為」と認定。国際規範に違反しているため主権免除は適用できないと判断した。

 判決を受け、菅義偉首相は「断じて受け入れることはできない」と述べ、賠償に一切応じない意向を表明。茂木敏充外相も韓国の康京和[カンギョンファ]外相と電話会談し、国際法違反を是正するための措置を早急に講じるよう求めた。

 今回の判決は国際法上の法理に反し、日韓両国の政府間合意もないがしろにするもので、とうてい容認できない。ただ、韓国司法は国内世論の圧倒的な支持を得ており、日本側が是正圧力を強めても、かえって対立を深めることになりかねない。

 日韓間の個人の請求権問題を巡っては、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決した」との合意がある。しかし、元徴用工訴訟でも、韓国最高裁は個人の訴えを認め、日本企業に賠償を命じている。再び同様の判断が示されたことで、今後も訴訟が続くことが懸念される。

 慰安婦問題に関する日本のこれまでの取り組みも、全く考慮されなかった。日本は政府として責任を認めた上で、90年代の「アジア女性基金」事業で、歴代首相からの「おわびと反省」の手紙を渡してきた。2015年の日韓政府間合意では「最終的かつ不可逆的な解決」を確認し、元慰安婦らを支援するために設立された韓国の財団に10億円を拠出している。

 元慰安婦の救済を優先させるために歩み寄った末の合意にもかかわらず、文在寅[ムンジェイン]政権は「前政権の弊害」と位置付け、事実上破棄。財団も解散させた。韓国世論の反発を落ち着かせるための対応だったとしても、それ以降、日本には納得し難い事態が続いている。

 今回の訴訟に関し、日本は関与しない姿勢を貫き、控訴しない方針だ。このまま判決が確定すれば、韓国内にある日本政府資産の差し押さえが可能になる。元徴用工訴訟判決は、日本の対韓輸出規制強化を招いており、資産売却が行われれば、さらなる報復合戦に発展しかねない。

 そうなる前に、韓国政府が軌道修正に乗り出すのが筋ではないのか。三権分立も、国際法の原則や政府間合意を尊重してこそ成り立つものだろう。

 安全保障や経済活動の結び付きを考えれば、日韓関係の安定化は必要不可欠だ。日本政府は国際司法裁判所への提訴も視野に入れつつ、両国政府による解決の道も諦めずに探ってもらいたい。

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