70歳就業の確保 自由で安心な雇用環境を

04月06日 09:17

 70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が1日、施行された。企業は社員が希望すれば65歳まで雇用することを既に義務付けられているが、就業の選択肢をさらに増やし、働きたい人の活躍の場を拡大する。

 少子高齢化が進み、30年後には現役世代が高齢者の暮らしをほぼ一対一で支える「肩車型社会」を迎える。社会保障の面からも労働力確保の面からも、高年齢者の就業機会の確保は、時代の求めに応じたものといえるだろう。ただ、それは押し付けであってはならない。制度の前提として、高齢者個々人の意欲や事情に応じ、自由に安心して働ける雇用環境整備が、まずなされるべきだ。

 これまでは企業が(1)定年延長(2)定年廃止(3)継続雇用制度の導入-のいずれかを活用し、希望者全員を65歳まで雇うよう義務付けていた。改正法ではさらに(4)起業やフリーランスを希望する人への業務委託(5)自社が関わる社会貢献事業への従事-なども追加した。

 厚生労働省の昨年6月時点の調査では、継続雇用や65歳定年などで65歳まで働ける従業員31人以上の企業は99・9%だが、66歳以上でも働ける制度がある企業は33・4%。県内では66歳以上が34・8%、70歳以上も32・3%あった。

 年金や貯蓄など老後への不安が高まる中、収入を伴う仕事を続けたいと望む高齢者は多い。企業は着実に対応を進めてほしい。

 ただ一方で、高齢者雇用には、処遇面を中心にまだ多くの課題が残されている。

 高齢者の再雇用などでは、賃金が抑えられることが多いが、「仕事内容が定年前と変わらないのに賃金が大幅に下がるのは不合理」との判決が昨年、名古屋地裁で下された。今月からは「同一労働同一賃金」のルールが中小企業にも適用されるようになった。高齢者雇用でも、能力に応じて意欲を維持できる処遇が求められる。

 高齢者の労災も増えている。企業は労働安全環境の改善に努めるとともに、高齢者の体力や事情に応じた柔軟な働き方を整備していかなければならない。

 今回の法改正で新たな選択肢となった「起業やフリーランスへの業務委託」では、企業と雇用関係がなくなる。働く場所や時間は自由になるが、労働者保護の関係法が適用されなくなる。労災保険に原則入れず、最低賃金も適用されないなど、働く側の自己責任が拡大する。労使間の事前の十分な協議が必要だろう。

 少子高齢化によって、長期的には労働力不足が進むことは間違いないが、新型コロナウイルス感染拡大により雇用情勢は暗転している。現状では、高齢者雇用の拡大が若者の雇用に影響を与える可能性が出てきたのも懸念材料だ。

 労働市場での世代間競合を避けるためにも、豊富な経験や人脈、技能を持つ高齢者と、体力があり新しい分野への順応性に優れた若者が、補完し合って企業の生産性を高める道を探りたい。

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