後退する香港自治 国際社会との約束どこに

04月05日 09:25

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会が3月末、香港の選挙制度見直し案を可決した。新たな選挙制度は香港の民主派を二重三重の関門で排除する仕組み以外の何ものでもない。香港の統制強化は決定的となり、「一国二制度」は有名無実化された。憲法に当たる「香港基本法」が最終目標としている普通選挙導入の趣旨に逆行し、看過できない。

直接選挙枠を削減

 香港トップの行政長官と立法会(議会)議員の選挙に適用。「愛国者による香港統治を確保する」と明記し、候補者資格を審査する委員会を新たに設けた。中国に対する忠誠度が審査の基準となり、立候補は難しくなる。民主派にとっては当落以前に、出馬のハードルが上がる。

 行政長官を選ぶ選挙委員会は、親中派に有利な枠を増やし、民主派が多数を占める区議会(地方議会)議員枠は取り消した。

 一方、立法会選の定数は70から90に増やしたが、民意を反映しやすく民主派に有利な直接選挙枠は、逆に35から20に削減。定数に占める比率は過去最低の2割程度になる。各選挙区で民主派の支持率は一般的に親中派を上回るが、議席獲得は10程度にとどまるとみられている。

 前回2016年の選挙で民主派が定数の4割を占め、次は過半数と勢いづいた状況は過去のものとなろう。民主派からは選挙参加に慎重論も出始めた。自治の後退は明らかである。

中国流の民主主義

 英国の植民地だった香港は、1997年に主権が中国に返還され「特別行政区」になった。香港基本法は返還から50年間は社会主義の中国本土とは異なる制度を適用し「一国二制度」の下、外交や国防を除く分野で「高度の自治」を認めると規定している。しかし、区議会選挙で民主派に8割を超える議席を獲得されるなど、中国政府は現体制の在り方に懸念を深めている。選挙制度の変更による民主派排除の背景には、政府の焦りもある。

 国全体の安全や発展のためには個人の自由は制限されるという考え方が「中国流の民主主義」とすれば、普通選挙や言論の自由を前提とする自由主義陣営の民主主義とは全く異なる。

 全人代常務委の幹部は「政権奪取や国家転覆との闘いであり、われわれに譲歩の余地はない」と米欧の批判に真っ向から反論する。

 とはいえ、「一国二制度」方式による返還を定めた84年の中英共同宣言は、国連に登録された国際的な公約で、法的拘束力があるとされる。国際社会および香港住民との約束を、内政問題だとして一方的に変更してしまうことは許されない。

 中国政府はこれまで、反中デモを香港の経済や社会を脅かすリスクと位置付け、昨年の香港国家安全維持法(国安法)施行などで徹底的に抑圧してきた。国安法違反の罪で民主派を相次ぎ起訴。このうち保釈を許可された全員に、「各種選挙の立候補禁止」との条件を付けた。

民主派に有罪判決

 また、デモを巡って1日、香港紙の蘋果日報(リンゴ日報)創業者、黎智英氏や、「香港民主主義の父」と呼ばれる李柱銘氏といった民主派重鎮ら7人に有罪判決が下された。言論弾圧も進む。

 これまで、親中派政治家でも選挙に強いことが、中央政府に対する発言力の一定の担保となっていたが、今後問われるのは忠誠心のみ。選挙制度見直しの真の勝者は中央政府だけとなり、香港統治の主導権を掌握することになる。

 もはや香港の自治を内側から守るのは極めて厳しくなった。日本をはじめ国際社会が中国に対し、約束を守るよう粘り強く要請していくしかない。

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