1月19日付

01月19日 09:20

 「紋切り型」も日常会話では大した効用がある、と作家の井上ひさしさんがエッセーに書いている。スピーチは「突然のご指名で…」と切り出し、久しぶりの知人には「お子さんも大きくなられたでしょう」とお辞儀する。考える労力を節約でき、新味はないけれど間違いない。「紋切り型さまさま」▼ただし政治家となれば話は別、と井上さん。「最善を尽くす」「万全を期したい」などの紋切り型は、物事が激しく動いている時ほど現実から浮遊してしまうそうだ▼コロナ禍の今はまさに「物事が激しく動いている時」だろう。しかし、菅義偉首相のきのうの施政方針演説は、紋切り型というかありきたりな言葉ばかり目立った▼「目の前の患者を救うため、力を尽くす医療従事者の皆さま」「私自身も、この闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意です」-。コロナの陽性が分かっても入院できず、自宅待機中に亡くなる人もいる。厳しい医療の現実を思うと、さすがに空々しく聞こえる▼批判の多かった「まず、自分でやってみる」の呼び掛けがなかったのは、内閣支持率の急落を気にしてのことだろう。手元の原稿から極力視線を上げる、といった努力もうかがえた。随所で声を張り上げ、与党議員が拍手で盛り上げたのは少し不自然だったが▼「実務型」らしく、政策で国民の信頼を得てほしい。「安心と希望に満ちた社会」への道筋を論戦を通して分かりやすく発信して…とここまで書いて、こちらも相当な紋切り型だと恥じ入った。

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