1月16日付

01月16日 09:13

 ノーベル文学賞作家のオルガ・トカルチュクさんの絵本『迷子の魂』は、忙しさのあまり自分の魂を見失ってしまった男の物語。医師が男に言う。「魂が動くスピードは、身体よりもずっと遅いのです」。治療法は、何もせず、どこにも行かず、ひたすら待つことだと▼慌ただしい社会から一人離れて家にこもり、ひげが腰に届くほど長い月日を過ごした頃、男は見失っていた魂と再会を果たす。ゆったりとした時間の中で自然や人とつながっている実感を取り戻した男は、自分を取り巻く世界が、豊かで美しいものに変わったことに気づく▼トカルチュクさんは別のエッセーにこうも書いている。「わたしにとって、ずっと前から、世界は何もかもが過剰だった。多すぎるし、速すぎるし、うるさすぎる」▼いつまで続くか分からない窮屈な自粛生活に耐える日々こそが、自分を取り戻す大事な時間なのかも。新型コロナウイルスの感染拡大で世界が混乱に陥る中、そんなことを考えさせられた▼最近、コロナ禍で生まれた新しい世界観や生き方に触れる本が目につくようになった。世界中の人間活動を止めた、目に見えないウイルスの副産物と言うべきだろうか▼熊本でも独自の緊急事態宣言が発令され、我慢の日々がしばらく続く。私たちの社会はこのままでいいのか、人が生きるために本当に必要なものは何か…。ソーシャルディスタンスも行動制限もなく、たくさんの出会いが待っている本の世界に浸り、自分と深く向き合う時間にするのもいい。

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