2月24日付

02月24日 09:18

 車輪付きの大きな箱に乗って、にぎやかに運ばれてゆく園児たちに出会うと、作家の小川洋子さんは拝んでしまいそうになるそうだ。<どれほど不機嫌でも、気分がすさんでいても、いっぺんで幸福な心持ちになれる>。そして<こんなにも人を幸福にさせてくれる乗り物は、どうやって作られているのか>▼エッセー『そこに工場があるかぎり』(集英社)は、小川さんが探求心の赴くままに訪ねたモノづくりの現場を描く。サンポカーと呼ぶ園児の乗り物のほか、鉛筆や菓子など。作り手の情熱や誇り、ぬくもりに満ちていた▼工場に行かないまでも、身の回りのモノの向こう側をどれだけ意識しているだろうか。利便性や価格を優先すると、作り手や売り手のことは忘れがちになる。コロナ禍がいっそう距離を広げたように思う▼この1年、熊本市中心部の繁華街にも空き店舗が目立つようになった、と先日の本紙にあった。顔だった老舗が店を閉じ、チェーン店がさらに増え、「街の個性が失われていく」と。ネット通販が増え、画一化していく私たちの消費行動を映した姿でもある▼老舗が歴史に幕を下ろす-。そんなニュースに触れるたび、以前取材したまんじゅう店の店主の言葉を思い出す。「閉店を決めてから新聞に載せて、何になるとですか」。身勝手さをとがめられた思いがした▼コロナへの警戒は緩めずに、懐かしい味や思い出の詰まった店、通りに立ち寄ってみようか。「熊本らしさ」を次世代につなぐ一助になると期待しながら。

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