2月23日付

02月23日 09:10

 9年前に熊日文学賞候補となった『天草独立戦記』(浜路一三さん著)は痛快なSF小説だった。独自の科学技術と人材を育てた天草が日本から独立する。その原動力になるのが天草四郎という名の天才科学者だ▼実際にも天草にはかつて独立論があった。昭和天皇の巡幸を陳情した島民に対し、熊本県幹部が「天草辺までどうして」と見下すような発言をした。「天草辺とは何事か」「できないなら独立して天草国ばつくる」。陳情団の反発がきっかけだったという▼国からの独立はさすがに非現実的だとしても、天草には島ならではの風土や文化が色濃く息づいている。キリスト教伝来や天草・島原の乱の歴史も、大きな意味で文化の一端ではないか▼「未来の子どもたちのために命懸けで取り組む」。前市長の急逝を受け、おととい新たに選ばれた52歳の天草市長が「灯台の役割を果たす」と決意を語っていた。若者の流出と人口減少。地方の抱える大問題はどこも同じである▼天草市の隣の苓北町、海に面した志岐八幡宮の宮崎義忠前宮司が戦後の貧窮時代に詠んだ句がある。<鯖[さば]釣って暮らしを立てて神仕[かむづか]え>。海の恵みを神に供えつつ、日々の生計をたてる喜び。経済的な潤いとは別次元の充実ぶりが垣間見える。それが天草の「豊かさ」ではないか▼少子高齢化に悩む地方にとって、最も必要なことは何だろう。住民の暮らしの維持と、その土地らしい生き方にヒントがありはしないか。新しいリーダーにぜひ地方の道しるべとなってほしい。

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