コロナ患者急増、医療逼迫「綱渡り」 熊本市は病床稼働率9割超 

熊本日日新聞 | 2021年01月15日 07:50

ビニールカーテンなどの感染対策を施し、コロナの重症患者に対応する3次救急医療機関の集中治療室(ICU)。昨年末から満床が続いている=熊本市

 新型コロナウイルス感染者の急増で、熊本県内の医療体制が逼迫[ひっぱく]している。熊本市の病床稼働率は9割を超え、重症者の治療を担う医療機関では、空けたベッドがすぐ埋まる綱渡りの状態に。現場の医師らは「命の選別をせざるを得ない状況が近い」と危機感をあらわにする。

 12日午後4時、高度救命医療を担う「3次救急医療機関」に指定されている病院に、コロナ患者の搬送開始のため職員に注意を促すアナウンスが響いた。

 この病院は集中治療室(ICU)をコロナ患者専用に転用し、人工呼吸器が必要な重症患者を受け入れている。感染者急増を受け、2床だった対応病床を2日から3床に増やしたが、昨年末から満床が続く。

 救命救急センター長を務める男性医師は「通常は人工呼吸器を外して1~2日は様子をみるが、今は次の患者のためすぐに転院させている。昨日は午前中に外し、午後に別の患者を受け入れた」と明かし、「綱渡りが続いている」と疲労感をにじませた。

 県内は10日までの1週間の新規感染者が525人と「ステージ4」(爆発的感染拡大)の基準を超えた。熊本市は10日、市内の病床が「ほぼ満床状態」として独自の「医療非常事態宣言」を発出。11日時点の市内の病床稼働率は92・5%に達している。

 県によると、県全体の病床確保数は433床で、14日時点の稼働率は63%。重症者は19人で、重症者用病床(59床)の稼働率は32・2%だが、現場の医師らは「物的、人的資源が足りず、受け入れ可能な病床ははるかに少ない。稼働率は実態と懸け離れている」と指摘する。前出の病院の看護部長は「防護服での看護は過酷で人手も必要。コロナ患者への対応は通常の数倍の労力が要る」と言う。

 この病院では、昨年11月だけで急性心筋梗塞の患者5人の受け入れを断るなど、他疾患の診療に影響が出ている。冬場は心筋梗塞や脳卒中などの患者が多く、一般病床も満床だ。院長は「必要な医療ができない状態を『医療崩壊』と呼ぶのなら、既にそう言っても過言ではない。(どの患者の治療を優先するかを選ぶ)『命の選別』は明日からでも起きうる」と警戒する。

 中等症や軽症患者を受け入れる医療機関への負荷も高まっている。熊本市のある公的病院では、12床が常に満床状態。認知症の患者を受け入れた際は看護師が付きっきりで対応するなど、高齢患者の増加で負担が増している。

 この病院の診療部長は「毎日、感染者数のニュースを見るたびにがっくりくる。病院の負担を軽くするため、高齢者や基礎疾患がある患者も軽症なら自宅やホテル療養を認めるべきだ」と提案する。

 県南の公的病院は、患者急増に伴い今週末に病棟の一つをコロナ専用にする予定で、他疾患での入院や手術の抑制を始めている。

 重症者に対応する別の3次救急医療機関の副院長は「病院全体で(医療を維持できるかどうかの)危険水域に入った」との認識を示す。「状況を改善するためには、とにかく新規感染者を減らすこと。県民一人一人が自覚を持って行動し、感染防止に努めてほしい」(福井一基)

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