「5年間の苦労 報われる」 7日、新阿蘇大橋開通 通行止めでも営業続けた「茶庵とちのき」

熊本日日新聞 | 2021年03月05日 17:30

国道325号の栃の木交差点に設置された通行止めを知らせる看板(右)とお店の看板(中央)。新たに新阿蘇大橋開通をカウントダウンする看板も置かれている=3日、南阿蘇村河陽
看板メニューのビーフカレーを持つ阿南理恵店長。右手前の招き猫は、開通と商売繁盛を祈念して県外のお客さんが贈ってくれた手作りという=3日、南阿蘇村

 「短いようで長かった5年間が報われる」-。2016年4月の熊本地震で崩落し、再建が進む国道325号の新阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)が7日、開通する。崩落した旧橋にほど近い同村河陽の喫茶店「茶庵[さあん]とちのき」の阿南理恵さん(68)は地震で経営が厳しくなったが、2カ月後に店を再開し、守り抜いた。「以前の活気が戻ってほしい」と、南阿蘇地域と店の本格的な復興を願う。

 店は1989年、“赤橋”と呼ばれていた旧橋から南に約1キロの325号沿いにオープン。以降、旧橋を渡って多くの観光客が訪れた。地域でコンビニや飲食店が少なかった時代。看板メニューである、じっくり煮込んだビーフカレーなどが好評で、「朝から晩までにぎわったんですよ」と阿南さん。

 しかし、地震で状況は一変。店は無事だったが、旧橋から続く325号の約1・5キロが通行止めになり、店がこの区間に含まれた。店から約450メートル離れた交差点には、「この先通行止め」と書かれた看板が設置された。

 「橋が落ちるなど想像もしていなかった」。店の前を通る車は工事関係のトラックだけになった。それでも、店の再開を聞いた常連客や工事関係者が頻繁に訪れ、何とか経営は持ち直した。

 全国で頻発する自然災害のニュースに触れるたびに熊本地震を思い出し、「また同じような苦労をするかもと、廃業が頭をよぎったこともあった」という。新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいた時期もあった。

 心の支えになったのは、旧橋から約600メートル下流で徐々に伸びていく新橋の橋桁だった。買い出しなどの際に見掛けるたびに、「ここで諦めるわけにはいかない」と気持ちを奮い立たせた。

 店内の大きな窓からは、立野渓谷や大津町以西の市街地が見渡せる。新橋の開通を控えた3日、バイクで昼食に訪れた熊本市北区の牛島秀成さん(74)は「静かで落ち着く。開通したら、友人とまた来ます」と話した。

 開通後、多くの来客を期待する一方、阿南さんにはちょっぴり不安もある。「お客さんとゆっくり会話を楽しんできた店の空間に、この5年で慣れてしまった」。ただ、南郷谷の玄関口で観光客を出迎えるつもりだ。「人の往来が増えると、阿蘇全体の復興につながる。私も地域への恩返しのため、できる限り店を続けていきたい」(上杉勇太)

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