
熊本県球磨村一勝地の「一勝地温泉かわせみ」を管理・運営している第三セクター「村ふるさと振興公社」が、村との業務委託協定を2021年度以降結ばず、撤退することが22日、分かった。新型コロナウイルス禍による宿泊客の減少に、昨年7月の豪雨災害が追い打ちをかけた。村は、温泉のみの施設として直営で営業を続ける方針。
かわせみは1996年4月にオープン。村が全額出資した同社が、開業当時から運営を続けてきた。大浴場の温泉施設のほか、全10室の宿泊棟やレストランを備える。
開館当初は人気を集めたが、近年入館者数は減少傾向で推移。20年4~12月は新型コロナ禍と豪雨災害の影響で前年比約59%減の3万3611人だった。かわせみは豪雨での直接の浸水被害を免れたが、村全域が被災。交通網が寸断したことなどが利用客の減少に拍車をかけた。
同社は豪雨災害後、レストランを休業し、従業員を減らして営業中。しかし、新型コロナ禍や災害からの復旧が長期化することを懸念し、来年度以降契約しないことを決めた。
村によると、新たな委託先を今月12日まで公募したが、応募は無かったという。同社の社長を務める松谷浩一村長は「事業を縮小せざるを得ないことに責任を感じている。コロナや豪雨の影響がなくなるまでは、村民の福祉増進を主たる目的にした温泉施設として残したい」としている。(小山智史)