害虫猛威、枯れる立田山 菌感染で被害 熊本市、伐採し拡大防止

熊本日日新聞 | 2020年11月29日 11:00

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立田山憩の森で、カシノナガキクイムシが入って枯れたシイの木=18日、熊本市中央区

 熊本市が管理する「立田山憩[いこい]の森」で、シイの大木などが害虫の媒介する病原菌に感染して枯れる被害が多数発生している。市は遊歩道沿いの枯れ木を伐採するなど安全策を講じつつ、感染拡大を防ぐ方針。江津湖や熊本城と並ぶ「森の都」のシンボルとして市民に親しまれ、2022年には全国都市緑化フェアの会場にも使われる。地元住民はショックを受けている。

 「樹齢の長いシイを中心に被害が出ている」。11月中旬、憩の森管理センター職員の大野和人さん(66)と共に現地を見て回ると、シイの大木が枯れていた。周囲にも、被害を確認したことを示す白のペンキが付いた木が散見された。

 センターは8月の調査時点で、シイやコナラなど179本の被害を確認。調査は森全体(約150ヘクタール)のうち南側の道沿いで目視できた範囲に限られ、実際の被害はより広域に及んでいる可能性もある。

 森林総合研究所九州支所(熊本市)によると、体長約5ミリのカシノナガキクイムシが保有する「ナラ菌」(カビの仲間)が原因。成虫の活動期は6~7月で、ナラ類やシイ・カシ類に穴を開けて入り込み、感染させる。感染した木は水を吸い上げる機能が損なわれて急速に枯れる。

 カシノナガキクイムシによる立ち枯れ被害は今年、全国的に多数発生しており、県内でも立田山を北限に天草市や人吉市で確認されている。流行の原因は不明だが、長雨や猛暑など今夏の異常気象が影響した可能性がある。九州では宮崎や鹿児島が主な被害地だったため、同支所や県は「熊本でも被害が本格化した」と受け止める。

 熊本市環境共生課は「倒木や枝の落下など人への被害が懸念される」として被害木を伐採し、焼却または薬剤で薫蒸して害虫を駆除する方針。「直ちに危険な状況にはなく、森への立ち入りを規制する予定はない」

 地元住民の河原畑濃[あつし]さん(75)は「長年かけて育った緑が枯れていくのは残念で、寂しい」。近くの樹木医今村順次さん(69)は「虫が入った木はまだたくさんあり、来年はもっと枯れ木が増えそう。市は来訪者に注意を呼び掛けるとともに、感染の広がりを抑え、大切な森を守ってほしい」と話している。(川崎浩平)

 カシノナガキクイムシ 19種類いるナガキクイムシの一種。一般的に枯れた木や衰弱した木を利用し、つがいで繁殖する。雄の成虫が木の幹や根元に穴を開け、雌を呼び込む。雌の背中にはナラ菌を持ち運ぶ菌のうがある。穴の大きさは直径2ミリほど。被害を受けた木には数百以上の穴がみられ、一つの穴から数十~数百匹が羽化して飛び立つ。穴からは木くずと虫の排せつ物が出て、根元や樹皮に積もるのが特徴。