色の名前が付いた川、なぜ熊本は多いの?

熊本日日新聞 | 2020年11月14日 11:30

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緑川の名前の由来の一つとして伝わる「穿の洞窟」。手前を流れるのは源流に近い緑川=山都町

 読者の疑問を記者が取材する熊日の「SNSこちら編集局」(S編)。今回は、熊本市東区の中学3年生(男子)から寄せられた「熊本には、白川や緑川など色の名前が付いた川が多いのはなぜ?」の理由を調べました。

 国内には国指定の大きな河川「一級水系」が109ありますが、そのうち色が付く川は、山形県の赤川と熊本県の白川、緑川の三つだけです。

緑川、伝説のタカの名由来か

 宮崎県境の山都町緑川地区にある鍾乳洞「穿の洞窟」(緑の宮)は、地元の人たちが緑川の名前の由来と信じる場所です。前を流れる緑川は川幅が2メートルほど。すぐ近くの三方山が源流です。地元の歴史に詳しい奈須曻さん(88)は、「(蒙古襲来時の伝説の武者)百合若大臣が飼うタカ「緑丸」が洞窟にまつられており、昔はそこが水源と考えられていたから緑川となった」と話します。

 このほか国土交通省の「白川・緑川治水史」には、源為朝が東上する途中に緑色の直垂を洗った説や、かつて酒だるの原料となる杉の緑が川面に映えて美しかった説なども紹介されていますが、はっきりとした由来は分かっていません。

黒川、火山灰で黒く見えた? 白川「水が澄んでいた」説も

 では、白川と支流の黒川の名前の由来は? 国交省の治水史では、大正時代に書かれた郷土史を引用し「白川は二源あり。阿蘇谷より出ずるものは水濁りて清からず、故に黒川と云い、南郷谷より発するものは水澄みて清し、故に白川と云う」と紹介しています。

 一方、熊本市中央区にある白川わくわくランド事務局の丸山修さん(62)は、他の文献などを調べ「黒川も水は澄んでいたけれど、川底の火山灰で川が黒く見えたのでは」と指摘。白川は「当時、源流と考えられていた白川水源が由来となった可能性もある」と解説します。

 江戸中期編さんの肥後国誌に「当国の三河と云うは白河黒河緑河なり」とあります。丸山さんによると、鎌倉時代以降の複数の史料に三つの川の名前が登場。白川は平安時代にも記録があり、約千年も前から今と同じ名前だったことが分かるそうです。

 さて、全国の川の名前を載せている河川大辞典には、「白川」は12、「緑川」は7、「黒川」は40も掲載されています。どうやら、色が付く川の名前は熊本だけが多いわけではないようですが、その由来は各地さまざまです。

 熊本の川に色の名前が多いのは意図的だったのか、偶然だったのか? 丸山さんは「調べれば調べるほど分からないことばかり」と話します。(岩下勉)