「終点巡り、バスは走る」 九州産交の133カ所、マニアが趣深いエピソード集

熊本日日新聞 | 2020年10月30日 17:00

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「産交バスの終点へ」を執筆した杉谷昌紀さん(左)と田中智大さん(右)=熊本市中央区

 熊本県内の広範囲で路線バスを運行している九州産交グループの路線網の終点に焦点を当てたユニークな本「産交バスの終点へ 熊本県下全終点の記録」を福岡など隣県在住のバスマニアが自費出版した。

 路線廃止の動きを耳にしては終点を巡ることをライフワークにしてきたという福岡市や鹿児島市などに住む会社員や公務員ら4人がそれぞれの記録を持ち寄り、1年がかりで編集した。

 1999年以降に存在した133の終点をエピソードと写真付きで紹介した。共同執筆者の1人で福岡県新宮町の会社員杉谷昌紀さんによると、過疎化などで路線の廃止が相次ぎ、現存しているのはわずか39カ所。「後々の世代のため記録として残しておきたかった」と話す。

 終点巡りを通じ、杉谷さんらは「高齢化と過疎化の現実を痛感した」と強調する。例えば山江村の「合子俣[ごうしまた]」は2006年の廃止時点で1日1往復のみ。近くに家は2軒しかなかったという。

 一方、熊本地震に関して記憶に残る終点として挙げたのは益城町の「テクノ団地東」。仮設住宅の住民のため設置していたが、住民の移転が完了して今年8月に廃止になった。こちらは復興を実感しての前向きな廃止と言えそうだ。

 杉谷さんらは「7月の豪雨で見られなくなった人吉球磨の景色も載っている。旅気分を味わってもらえるとうれしい」と話す。

 A5判、141ページ。「蔦屋書店 熊本三年坂」で販売。1500円。TEL090(7537)5819。(東有咲)