「美容に効果」プロテイン女子増 運動後や朝食代わりに、新商品も続々

熊本日日新聞 | 2020年10月16日 12:00

image
スポーツジム内のプロテインバーで、「プロテインを飲み始めて肌の張りとつやが良くなった」と話す会員の女性(左)=熊本市中央区のゴールドジム上通熊本店

 タンパク質を効率よく取れる補助食品のプロテイン。スポーツマンや筋トレに励む“マッチョ”な男性が飲むイメージが強かったが、最近は美容やダイエット目的で取り入れる女性が増えている。各メーカーは女性向けの商品開発に力を入れており、コンビニなどで手軽に買えるおやつ感覚の商品が続々登場している。

 プロテインには、牛乳に含まれるタンパク質の一種「ホエイ」などを原料とする動物性と、大豆由来の植物性がある。水や牛乳に溶かして飲む粉末タイプのほか、プロテイン配合の加工食品がある。

 熊本市の看護師、清瀬由里奈さん(24)は、牛乳で溶いたプロテインを朝食代わりに毎日飲んでいる。外出自粛中の5月、自宅でトレーニングを始めた際、プロテインを飲む女性の投稿をインスタグラムで見て「美容のために」飲み始めた。「ココア味で飲みやすく、プロテインのイメージが変わった」と言う。

 以前は朝食を抜きがちだったが、毎朝プロテインを飲むようになって「体重は変わらないけど、体調や肌の調子はいい気がする」。

 ゴールドジム上通熊本店(同市中央区)の木野俊彰店長(33)によるとプロテインへの関心は女性会員の間で高まっており、トレーニングをしない日にプロテインだけ飲みに来る女性もいるという。

 同市の40代主婦は4年前、ダイエット目的でトレーニングを始め、プロテインも飲み始めた。「髪や肌の張りとつやがよくなり、爪も丈夫になった。筋肉量が増え、体が引き締まった」と効果を実感している。

 木野店長によると、飲むタイミングで効果的なのは運動直後と起床後すぐ。「食事が肉中心であれば飲まなくていいが、肉が多いと脂質を取りすぎる恐れがある。プロテインは効率よくタンパク質を取るのに最適」と話す。

 大手食品メーカーの明治は、プロテインのブランド「ザバス」で、コラーゲンやビタミンなどを加えた女性向け商品を販売している。プロテインを飲む女性は2015年ごろから増え、担当者は「食事を抜くダイエットではなく、運動とプロテインでかっこいい体をつくるという考えが広まった」と語る。

 ブームを後押ししたのがコロナ禍の外出自粛。同社は「コロナ太りを気にして運動を始めた女性がプロテインを利用している」とみる。ザバスシリーズの購入者のうち女性は3割。主な支持層は20代~30代で、今後さらに拡大を見込む。

 他の食品メーカーもプロテイン入りのチョコレートやゼリー、ソーセージ状の「ささ身のプロテインバー」といった新商品を相次ぎ投入。コンビニに「プロテインコーナー」が登場するなど注目度が高まっている。プロテイン関連商品の国内市場は、14年度の約200億円から19年度は約550億円に急伸した。

 「手軽にタンパク質摂取」をうたう商品はプロテイン以外にも広がる。明治は今年3月、新ブランド「タンパクト」を発売。必須アミノ酸が豊富な「乳タンパク」を配合したビスケットやチョコレート、チーズ、スープなどを展開している。担当者は「タンパク質は老若男女に必要な栄養素。商品を健康な体づくりに役立ててほしい」とアピールする。(豊田宏美、福井一基)

◇専門家「タンパク質、適切な摂取を」

 尚絅大短期大学部食物栄養学科の秋吉澄子准教授(42)に、プロテインを含むタンパク質摂取の目安や注意点などを聞いた。

 タンパク質は筋肉や皮膚、臓器などをつくり、エネルギー源にもなる不可欠な栄養素だ。1日の推奨摂取量は、成人男性が65グラム、高齢男性60グラム、女性は成人・高齢ともに50グラム。「体重×1グラム」で計算してもいい。

 「高齢者は特にタンパク質不足に注意してほしい」と秋吉准教授。心身の働きなどが弱くなる「フレイル(虚弱)」や筋肉量が減少する「サルコペニア」になる恐れがあるからだ。タンパク質摂取量が多いほど、フレイルの発症率が低いという研究結果もある。ただ、腎臓疾患がある人は取りすぎに注意が必要で、一般の人の半量を目安にすると良い。

 プロテインでタンパク質を摂取することについて、秋吉准教授は「プロテインはあくまで補助食品。筋肉量を増やしたい人は運動と合わせて取ると効果的だが、そうでない人はバランスの取れた食事ができていれば必要ない」と言う。欠食しがちな人が栄養を補うために飲むのは良いそうだ。

 ダイエット目的でプロテインを飲む人もいるが、「特段トレーニングをしていない人が日頃の食事を変えずに飲み続けると太る恐れがある」と注意を促す。(豊田宏美)