1年生の入部ゼロも 部員減に悩み、コロナ禍の高校運動部 競技レベル低下懸念

熊本日日新聞 | 2020年9月18日 12:30

image
1年生の入部がなく、2年生だけで練習する熊本高ボート部の選手たち=8月24日、熊本市東区の江津湖

 「新型コロナウイルスの影響で休校が長引いたせいか、高校1年の運動部員が減っている」-。このような投稿が熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に複数寄せられた。熊本県内の高校スポーツの現場を訪ね、部員減に悩む上級生や指導者らの声に耳を傾けた。

 「1年生の入部はゼロ。人数が少ないと出場できる種目が限られ、練習で競い合う機会も減ってしまう」。熊本高ボート部を指導するOBの古閑義朗さん(29)は頭を痛める。コロナ禍に伴い、部活動は3月から5月末まで休止。入学式などで1年生に部活動をPRする機会もなかった。今は2年生6人だけで活動中だ。

 例年は入学直後のボート体験会を経て入部を決めるケースが大半だという。中学までサッカーをしていた漆島優海さんは唯一の女子部員。「自分も熱心な勧誘を受け、ボートに乗ってみると水面を滑っていくのが楽しかった。女子の後輩が入れば、一緒にダブルスカルに出場したい」と仲間が増えるよう熱望する。

 2年生部員たちは6月以降、入部案内のビラを校内に張ったり、1年生の教室を回ったりと奔走してきた。田中涼太主将は「体験会の希望はいつでも受け付ける。まだ遅くないので参加してほしい」とアピールする。

 県高校体育連盟によると、7月1日時点で連盟に加盟する競技の3学年トータルの部員は前年比2%減の1万9949人。コロナ禍での3年生の早期引退や少子化の影響も考えられる。部員の多い競技を見るとテニスは16%減、ソフトテニス9%減、ハンドボール7%減。逆にサッカーやバドミントン、弓道は1~7%増えている。

 ハンドボールは昨年、県内で開かれた女子世界選手権が盛況だった。それだけに「競技人口の拡大を期待していたのに」と関係者から落胆の声も漏れる。

 例年10人ほどが入部する熊本北高ハンドボール部の1年生は6人。コロナ禍で約2週間の部活動見学期間を確保できなかったのが響いたという。現在の部員数は2年生8人と合わせ14人。2年の藤川颯生[はやせ]主将は「1人でも欠けると、7人同士での紅白戦もできない」と苦笑するが、「練習を工夫して県大会ベスト8を目指す」と気力はなえていない。

 1年生部員の減少傾向について、県ハンドボール協会の奥園栄純理事長は「興味はあっても、休校が続き、入部する機会を逸した生徒がいるようだ」。選手数が先細りすると競技レベルの低下も懸念されるため、「各校とも紅白戦をできるぐらいの人数は確保したいが…」と表情を曇らす。

 コロナ禍の収束が見えない中、各競技では感染防止策を徹底した上で大会を再開させる動きが本格化してきた。奥園理事長は「部員の減少は今年だけと思いたい。競技人口を増やすため、各地域で中高生が一緒に練習できるような環境づくりを考えたい」としている。(井田真太郎)