松橋事件で国と熊本県を提訴 再審無罪の宮田さん

熊本日日新聞 | 2020年9月17日 14:11

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再審無罪となった「松橋事件」を巡る国家賠償請求訴訟の提訴前に、熊本地裁前で門前集会を開く三角恒弁護士(右から2人目)ら原告弁護団=17日午前10時20分ごろ、熊本市中央区(池田祐介)

 1985年に宇城市松橋町で男性=当時(59)=が刺殺された「松橋事件」で、殺人などの罪で服役し、昨年3月に再審無罪が確定した宮田浩喜さん(87)=熊本市=が17日、違法な捜査や証拠隠しで殺人犯の汚名を着せられ、長期間身柄を拘束されたとして、国家賠償法に基づき、国と県に対して約8481万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。

 成年後見人の衛藤二男弁護士によると、宮田さんは現在、認知症のため他者との意思疎通が難しいという。弁護団は「再審無罪にかけていた宮田さんの無念を晴らし、名誉を回復したい」として国賠提訴に踏み切った。

 訴状によると、検察は宮田さんが「犯行時に小刀に巻き付け、後で燃やした」と自白したシャツの布片が存在し、自白を覆す証拠となることを分かっていながら、裁判所に一切提出しなかった。県警は任意捜査の許容限度を超えた長時間の取り調べを連日にわたって続け、宮田さんを追い詰め、虚偽の自白を誘導するなど重大な過失がある、としている。

 原告側は、これらの違法な捜査や証拠隠しによって「宮田さんは殺人罪で逮捕から仮釈放まで13年間拘束された上、服役後も社会の偏見にさらされ続けた」と主張している。

 提訴後、記者会見した弁護団共同代表の三角恒弁護士は「宮田さんはなぜ無実の罪を着せられなくてはならなかったのか、捜査機関の責任を明らかにしたい」と訴えた。

 県警と熊本地検はいずれも「コメントは差し控える」としている。(國崎千晶)