「田んぼダム」治水効果に期待  球磨川流域、県が実証実験へ

熊本日日新聞 | 2021年03月08日 11:30

 昨年7月豪雨で氾濫し甚大な被害が出た球磨川流域の治水対策として、国や熊本県が期待を寄せるのが「田んぼダム」だ。降雨時、田んぼにより多くの雨水を一時的にためてゆっくりと流すことで、河川のピーク時の流量を減らし洪水被害を軽減する仕組み。農家の協力が得られれば、治水の大きな武器となる。

 水田にある既存の排水ますに、流出量を調整するせき板を設置。通常、水位が10センチとなるところを、25センチまで雨水をためられるようにする。25センチを超えると自然に水が流れていく構造で、降雨時に農家が水田に出て特別な操作をする必要はない。

 県では初の試みだが、新潟県や兵庫県などで実用化され、効果が確認されているという。農家の協力を得やすくするため国は2021年度から、田んぼダムに取り組む地域の直接支払交付金に10アール当たり400円を加算する。

重点10項目にも

 県は、2日公表した県南地域の復旧・復興プランの重点10項目にも田んぼダムを盛り込んだ。球磨川上流域8市町村の水田の約半分に相当する約3300ヘクタールを田んぼダムとして活用できれば、一時的に約500万トンをためる効果があると試算している。21年度末までに8市町村のモデル地区計270ヘクタール超で実証実験開始を目指す。

 実験では年2回、梅雨と台風の出水期を狙って効果を検証する。稲作への影響は少ないとみるが、水を嫌う葉タバコなどを隣接地で栽培している地区なども対象に組み込み、影響を調べる。湯前町の一部では、遠隔操作で事前放流が可能な「スマート田んぼダム」の実験も国費で推進。作物に被害が出た場合の農家への補償費なども含め、22年度までの事業費として1億6800万円を確保した。

沈砂池を整備

 田んぼダムが効果を最大限発揮するためには、田んぼにつながる用排水路の機能が土砂や流木で損なわれないようにすることも重要だ。

 7月豪雨では、湯前町から錦町にまたがる農業用水路の「幸野溝」や「百太郎溝」に、上流の森林から土砂が流入。防災ダムも兼ねる農業用の清願寺ダム(あさぎり町)にも想定を上回る約28万立方メートルの土砂が流れ込んだ。県は、森林側から溝に流れ込む小さな川沿いに「沈砂池」を整備し、土砂や流木を食い止める方針だ。

災害に強い森

 さらに、土砂や流木の発生源となる荒廃した森林を整備し、山全体の防災機能を高めることも急がれる。

 県は球磨川左岸側の森林約1万ヘクタールを対象に渓流の現況や荒廃箇所を調べ、必要な治山施設などを整備する方針。20年度一般会計補正予算に調査費1千万円を計上した。

 「災害に強い森づくり」の推進に向けた調査費200万円も計上。球磨川流域の森林にモデル地区を設定して地元の森林組合などと調査し、保水力向上につながる整備や管理手法の確立と普及を目指す。県農林水産政策課は「農業と森林・林業の連携により、流域治水を推進していく」と話している。(中尾有希)

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