新抗がん剤、患部に集中作用 細胞死滅効果大、実用化へ  バイオダイナミックス研究所(熊本市)開発

熊本日日新聞 | 02月23日 09:26

EPR効果を応用した高分子化ホウ素製剤について説明するバイオダイナミックス研究所の前田浩理事長(左)=19日、熊本市中央区
腫瘍組織を用いた実験で、高分子が低分子に比べ腫瘍部のみに集積していることを示す画像(バイオダイナミックス研究所の提供データから作成)

 がん患部に薬剤を集中させることのできる「EPR効果」を発見したバイオダイナミックス研究所(熊本市中央区)の前田浩理事長(82)=熊本大名誉教授=は、同効果を応用した新たな抗がん剤「高分子化ホウ素製剤」を開発したと発表した。

 放射線の一つである中性子線を照射する治療と組み合わせることで、がん細胞を死滅させる効果を最大限に発揮する。治験開始時期などは未定だが、「実用化されれば副作用のないがん治療が可能になる」としている。

 EPR効果は、がん周辺の血管の壁に生じた隙間から血中の高分子(大きな分子)が漏れ出す現象。前田氏が熊本大医学部教授時代の1986年に発表した。高分子薬剤を患部に集めるがん治療などの基本原理となり、2016年に米情報会社が前田氏と共同研究者をノーベル賞有力候補に挙げて注目された。

 今回の抗がん剤は目薬に用いられるホウ素など三つの成分を合成した。静脈注射で体内に投与すると、がん組織に集まって翌日までとどまる特性がある。体外から中性子線を照射すると、ホウ素が反応してがん細胞を死滅させるα線が発生する。実験ではマウスに移植したがんが半分に縮小し、皮膚や臓器への副作用は皆無だったとしている。

 ホウ素に中性子線を照射する治療法は以前からあるが、これまでの抗がん剤は低分子(小さな分子)しかなく、がん周辺以外の正常な血管からも漏れ出して健康な組織にダメージを与える恐れがあった。高分子製剤は低分子に比べてがんへの集中度が10~20倍高まり、副作用を回避するほか、がんへのエネルギー供給を抑制する作用もあるという。

 福島県のベンチャー企業と共同研究。価格や電気代を10分の1に抑える超小型の中性子線照射装置と共に実用化を目指している。同研究所で19日会見した前田氏は、「がん治療に新たな選択肢ができる可能性が非常に強くなった。3年以内に治験に入りたい」などと語った。(川崎浩平)

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