国民賛同募り再審請求 菊池事件 弁護団「違憲放置できず」

熊本日日新聞 | 2020年11月14日 09:57

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熊本地裁前で開かれた集会で「男性の無念をしっかりと胸に刻み、闘い抜きたい」と話す菊池事件弁護団の徳田靖之共同代表(左)=13日、熊本市中央区

 ハンセン病患者とされた男性が1952年に起きた殺人事件の被告になり、無実を訴えながら死刑執行された「菊池事件」の弁護団は13日、国民から広く賛同を募った再審請求書を熊本地裁に提出し、再審開始の決定を求めた。

 再審請求書は、事実上非公開だった男性の審理を違憲と認め、今年3月に確定した熊本地裁判決に触れ、「憲法違反の死刑判決を放置できない」と強調。凶器とされた短刀ではできない傷が被害者の体にあり、血痕が男性の着衣に付着していなかったとする法医学鑑定書も新証拠として提出した。

 刑事訴訟法は本人死亡の場合、再審請求できるのは遺族か検察官と規定。菊池事件ではハンセン病への差別が残る中、男性の遺族は請求に踏み切れていない。検察も、国立療養所・菊池恵楓園入所者自治会などによる要請に応じていない。

 弁護団は9月から再審に賛同する請求人を募り、1205人が集まった。今回の手続きは憲法が規定する国民の請願権に基づくという。弁護団は今後も賛同署名を募り、同地裁に順次提出する。

 請求人の1人でハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会の竪山勲事務局長(71)は記者会見で検察を批判。「なぜ弱者が名誉回復のため闘い続けなければならないのか。司法が司法の役割を果たすべきだ」と訴えた。

 熊本地裁は再審請求書を受理するかどうかについて、「個別事案にはコメントしていない」としている。(澤本麻里子、國崎千晶)

●菊池事件 1951年、県北の村の元職員宅でダイナマイトが爆発し、近くの男性が逮捕された。ハンセン病患者として県に報告されたことを恨んでの犯行とされた。男性は翌52年、国立療養所・菊池恵楓園内の拘置所から逃走。その後、元職員が刺殺体で発見され、男性が殺人容疑などで逮捕された。裁判は同園などに設けられた特別法廷で開かれ、男性は無実を訴えたが、57年に死刑判決が確定。3回の再審請求も退けられ、62年9月に刑が執行された。