廃棄うろこでコラーゲン飲料 天草市牛深町の親子が商品化
熊本日日新聞 | 2021年09月04日 14:19

養殖マダイを出荷する際に廃棄されてきたうろこを、コラーゲン飲料の原料にする取り組みが、天草市牛深町で続いている。地域の未利用資源の活用法としても注目を集める。
これまで、水産加工業社などから出るうろこは産業廃棄物として処理されてきた。地元の自営業、浜崎義昭さん(58)は5年前、廃棄うろこの活用に着目。うろこからのコラーゲン抽出で実績があるルウ研究所(鳥取県米子市)に依頼し、商品化を探った。
当初は棒受け網漁の知人を通して、イワシなどのうろこを調達。洗浄して乾燥させ、不純物を取り除くなど、2年かけて純度100パーセントのコラーゲン抽出に成功した。
商品化のめどは付いたものの、今度は大量のうろこの安定確保が課題に。そこで、浜崎さんは年間を通して仕入れが可能な養殖マダイに目を付けた。会社「ビーチトップ」を起業し、19年から販売を開始。毎月約100キロのうろこを研究所に送り、コラーゲン飲料の生産を委託している。
「商品の評判も良く、取引先からはうろこを月200~300キロ送れないかとの注文もある」と浜崎さん。ただ、うろこを洗浄し、選別する作業には労力が必要となる。
そこで強力な助っ人が現れた。福岡市で航空会社に勤務していた長女の有理子さん(26)が、コロナ禍で在宅勤務などが増えたのを機に、5月で退職し家業を手伝うことに。「捨てられていた物を商品にするのは、持続可能な開発目標(SDGs)につながり、やりがいを感じた」と有理子さん。
浜崎さんにうろこを卸す水産会社の深川英穂社長(64)は「産廃を減らせることはこちらとしてもメリット。環境保全にも寄与できる」。今後は原料の仕入れ先となる加工業社を増やすとともに、インターネット販売にも注力する予定だ。「天草には未利用の資源がもっとあるはず。他のうろこにも挑戦したい」。浜崎さん親子のうろことの格闘の日々は続く。(谷川剛)
※2021年08月31日付 熊本日日新聞朝刊に掲載