ICTで農業に活気を ベルギー出身女性が南小国町でコメ作り

熊本日日新聞 | 2021年09月04日 13:54

地域おこし協力隊員のショヴォー・ナタリーさんと、水田に設置したセンサー=南小国町
センサーから送られたデータはパソコンなどで確認できる

 ベルギー出身で南小国町地域おこし協力隊員のショヴォー・ナタリーさん(35)は、情報通信技術(ICT)を使ったコメ作りの省力化を目指し、同町の水田で実証実験を始めた。デジタル関連の豊富な知識を生かし、「農作業を少しでも楽にできれば、若い人が増えて農業に活気が出る」と意気込む。

 元々、デジタル機器を触ることが好きだったナタリーさんは2011年、ベルギーから大阪へ移住。映像制作会社やデザイン会社に勤務し、プロジェクションマッピングのシステム構築などを担当していた。阿蘇市出身の男性との結婚を機に、20年3月に阿蘇へ移住した。

 移住前の20年2月、南小国町のまちづくり公社「SMO南小国」が開催した、地域おこし協力隊の選考を兼ねたセミナーに参加。農業の担い手不足という町の課題を耳にしたナタリーさんは、ICTを生かした農業の省力化を提案し、協力隊に採用された。ナタリーさんは農業未経験のため、初年度は地元農家の指導で稲作などを勉強した。

 今年から町中心部の水田(約65平方メートル)を借り、ICTを生かした稲作を開始。最初に手を付けたのは水の見回りの省力化だった。

 稲作は水田の水位調整が不可欠で、農家は朝夕に田んぼに出向き、水位を確認する。そこでナタリーさんは水田内に、水位や水温、気温、湿度のデータを計測するセンサーを設置。センサーは無線LANでパソコンなどの端末と常時接続しており、10分ごとにデータを送信する。「遠隔地でも水田の状態を確認でき、現地に行く手間が省ける」。センサーはICTを生かした農業を支援する東京電機大(東京)から提供を受けた。

 ただ、山間部に位置する同町での実用化には課題もある。無線LANが整っていない山奥などではデータの送信が困難。大雨や強風でセンサーがずれることもあり、定期的な見回りも欠かせない。

 ナタリーさんは課題と向き合いつつ、さらなるICTの活用も模索する。「協力してくれる農家を増やし、多くのデータを取りたい」。水温や気温などのデータをコメの生育状況と結び付ければ、収量や品質の向上も見込めるからだ。

 また、一層の省力化を図るため、水田の水門を開閉できる機材の導入も検討する。ナタリーさんは「ICTによる省力化で、農家の担い手不足解消につなげたい」と話す。(木村馨一)

※2021年08月25日付 熊本日日新聞朝刊に掲載

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