山椒の栽培 地域活性化の〝刺激〟に

甲佐町宮内地区の住民 産地化めざす

熊本日日新聞 | 2021年02月18日 10:00

「ぶどう山椒」の苗木を持つ佐藤直樹さん(左)と、田上菊夫さん。植えてから2、3年で実が収穫できるようになるという=甲佐町
2016年6月の豪雨直後の甲佐町・宮内地区(佐藤直樹さん提供)

 甲佐町東部の山あい、緑川上流にある宮内地区では昨年から、サンショウの産地を目指して住民が苗木を植え始めた。実が収穫できるのは来年以降の見込みだ。サンショウはアユやウナギといった町の特産品と相性が良いだけでなく、近年は西洋料理やスイーツなどにも利用の幅が広がっており、地域活性化の“スパイス”として期待が膨らんでいる。

 平成が始まった1989年には約千人いた同地区の人口は、30年間で激減した。現在は約200世帯350人が暮らす。高齢化によって耕作放棄地が増えたうえ、2016年4月の熊本地震、同6月の豪雨災害で大きな被害に見舞われた。

 「何か地域をピリッとさせることを始めないと、どんどん元気を失ってしまうと思ったのがきっかけ」。約10年前に東京から移住し、農業を営む佐藤直樹さん(40)がサンショウについて調べ、住民に説明して栽培を持ち掛けたという。

 「突飛なものを作るのではなく、地元で親しまれてきた味、親和性が高いものを作らないときっと持続しないと考えた時、サンショウに思い当たった」と振り返る。

 農林水産省の統計によると、サンショウの国内収穫量の65%は和歌山県産だ。競合する地域が少ないうえ、高齢者でも手入れや収穫がしやすい。里山で課題になっている鳥獣被害が比較的少ないことも後押しした。

 20年1月、農家18人で「宮内地区山椒[さんしょう]生産組合」を発足。県の地域特産物産地づくり支援対策事業を活用し、同月に高さ60センチの「ぶどう山椒」の苗木400本を植栽。今年1月31日にも311本を追加した。2、3メートルに成長したら実を収穫できるようになるという。

 組合長の田上菊夫さん(71)は「まさかこの年になって新しい農作物に挑戦するとは思ってなかったけど、収穫が本当に楽しみ」とほほ笑む。「ウナギにかけるか、ちりめん山椒くらいしか知らなかったからね」

 サンショウは近年、フランス料理やチョコレートにアクセントを加えるスパイスとして注目を集め、栽培面積が増加傾向にある。一大産地の和歌山県でも、ブランド化やヨーロッパへの輸出に力を入れている。

 県内で店を構えるショコラティエやシェフも宮内地区に関心を寄せ、早くも視察に訪れるようになった。

 「宮内地区で収穫したサンショウをいろんなお店で使ってもらえたら、きっと住民もわくわくするはず」と佐藤さん。「子や孫に自慢できるような取り組みに育て上げ、自慢の地域にしたい」と意気込む。(立石真一)

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