特殊詐欺の国際化 各国が連携し摘発・抑止を

4月21日 09:30

 振り込め詐欺など特殊詐欺の犯行形態の国際化が最近、目立ち始めている。国をまたいでの犯罪に対処するには、各国の捜査機関の連携がカギとなる。当局が十分に協力し合い、高齢者などを狙った卑劣な犯罪の広がりを抑止していかなければならない。

 警視庁は18日、台湾籍の19~44歳の男女10人を入管難民法違反(資格外活動)の疑いで逮捕したと発表した。台湾警察からの情報を受けての摘発で、10人は特殊詐欺グループのいわゆる「かけ子」として、金をだまし取るために中国に向けて日本から電話をかけていたとみられている。

 千葉県や山梨県の民家を拠点に、共同生活をしながら定期的にメンバーを入れ替えていたという。民家からは詐欺電話のマニュアル、中国人の名簿、携帯電話のSIMカードなどが押収された。

 3月末にはタイで、日本国内へ振り込め詐欺の電話をかけていたとみられる日本人の男15人が現地警察に逮捕された。男らが共同生活していたタイ中部パタヤの一軒家には、約50台のIP電話機と約20台のパソコンが設置されており、不審に思った大家が警察に通報したのが摘発の端緒だった。

 男らは22~54歳で、九州・沖縄の出身者が多く、中には多重債務の借金を抱えている者もいた。財布やパスポートを金庫で管理され、強制的にかけ子をさせられていた疑いもあるという。高齢者を狙って「有料サイトの利用料金が未納になっている」と迫り、購入させた電子マネーをだまし取っていた。被害額は3月までの2カ月間で2億円超に上るとみられる。15人のうち約半数が、タイの前にフィリピンに長期滞在していたことも分かったという。

 これら二つのケースからうかがえるのは、犯行グループが自国内での摘発を逃れるため、かけ子の拠点を海外に移しているとみられることだ。タイの例からは、各国へ転々と拠点を移動させている可能性も考えられる。かけ子集団を組織し、拠点や電話、パソコンを用意するには多額の資金も必要なはずだ。暴力団など各国の犯罪グループが組織的に関与しているのか-。そうした背後関係の解明はこれからだ。

 一般的に国をまたぐ捜査には、通訳の問題などさまざまな困難がつきまとう。特に特殊詐欺のような事件では、犯行グループの身柄拘束だけでなく、被害の裏付けなど、幅広い捜査が不可欠になる。警察庁などは今回タイに捜査員を派遣しているが、今後も当局間で十分に協力し情報交換して、被害者や送金ルート、背後関係なども含めた事件の全容解明を目指してもらいたい。

 日本国内の特殊詐欺被害額は減少傾向にあるが、依然として深刻な事態が続いている。被害は中国や台湾でも増えているとされる。連携しての捜査・摘発とともに、新たな詐欺の手口や高齢者らへの啓発方法など、広く被害防止のための情報を共有していくことが必要だろう。