WTO逆転敗訴 食の「安全」訴え続けたい

4月18日 09:33

 東京電力福島第1原発事故を理由に韓国が福島など8県の水産物の輸入を禁じていることに対し、世界貿易機関(WTO)の上級委員会が容認する判断を下した。


 韓国はWTOの判断を「高く評価し歓迎する」としており、禁輸措置は当面続く見通しだ。原発事故から8年。日本、特に復興へ向けて輸出再開に大きな期待をかけていた被災地にとって、極めて残念な結果だ。

 韓国が輸入を禁じているのは青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県で水揚げや加工された水産物すべて。このうち、日本はマイワシやマサバ、カツオ、ホタテガイなど28魚種の禁輸解除を求めて2015年にWTOに提訴していた。

 昨年、一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)は、「禁輸措置に科学的根拠がない」との日本の主張を認め、WTO協定に違反する不当な差別だとして是正を勧告した。ところが上級委は、そのパネルの判断を破棄。WTOの紛争処理は二審制で、上級委が最終審となるため、日本の逆転敗訴が確定した。

 争点になったのは、韓国の禁輸措置が「不当な差別」で「必要以上に貿易制限的」かどうかだった。一審のパネルでは日本の主張が認められていたため、政府内には二審も「当然勝訴」との楽観論が広がっていたという。そこに慢心はなかったか。対応は十分だったのか。検証を求めたい。

 上級委も日本の主張の一部は認め、パネルが認めた日本産の食品の安全性について異を唱えなかったことなどから、菅義偉官房長官は「敗訴したとの指摘は当たらない」との見解を示した。だが、WTOのお墨付きを得ることで、被災地の食品の安全性を世界にアピールする好機にしようとしていた日本政府にとって、大きな痛手であることに変わりはない。結果を重く受け止め、今後の戦略を練り直していくべきだ。

 日本は農水産物や食品の輸出拡大を掲げ、今年は1兆円達成を視野に入れている。しかし、原発事故を起因とする日本産食品への規制は直後より減っているとはいえ、依然として韓国を含め中国や台湾など23の国・地域で続いており、大きな障壁となっている。特に東日本大震災の被災地は水産業が主力産業で、復興を後押しするには規制解除が欠かせない。

 日本は食品の放射性物質について厳しい基準を設けている。福島をはじめとする被災地の産地も、さらに厳格な基準でチェックするなど食品の安全性の担保に努めてきた。政府はこうした取り組みを丁寧に世界に発信し、規制の緩和や解除を働き掛け続けるべきだ。韓国とも対話を重ね科学的根拠を示し、粘り強く理解を求めたい。

 国内の風評被害もなくなったとは言い難い。日本の消費者も被災地の食品を敬遠するような状況では、世界に向けた訴えも説得力を欠く。原発事故の適正な処理とともに、国内でも食の「安全」の信頼感を高める努力が必要だろう。