介護職員による虐待 労働環境の改善も必要だ

4月11日 09:18

 介護職員による高齢者の虐待が増え続けている。先日の厚生労働省の発表によると、2017年度に全国で過去最悪の510件(県内8件)が発生。前年より58件多く、11年連続での増加となった。

 要介護者の増加に人手確保が追いつかない介護現場の余裕のなさが、虐待増加の背景にあるようだ。虐待防止のためには、介護職員を支える労働環境の改善も必要だろう。

 510件のうち、虐待を受けた高齢者の8割が認知症。暴力や拘束などの「身体的虐待」が最も多く、次いで暴言などの「心理的虐待」、ほかに「介護放棄」もあった。虐待の要因としては「教育・知識・介護技術の問題」が最多、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が挙がっている。

 熊本県内の65歳以上の要介護認定者は約10万6千人(17年4月)で、10年前の1・3倍になった。これに応じて介護サービスも拡大。例えば介護付き有料老人ホームの事業所数は10年前の4倍以上、認知症高齢者グループホームは1・6倍に増えている。

 一方で介護職員の不足は慢性化している。県高齢者支援課によると、県内の介護施設職員(16年度)は2万9866人。毎年増えてはいるが、将来必要な介護の担い手に対して確保できる見込みの職員数の割合(25年度、厚生労働省推計)は94・1%にとどまる。県内には専門知識を備えた介護福祉士の登録者が約2万7千人いるが、その半数程度しか実働していないともいわれる。全国的にも介護職の有効求人倍率(17年)は3・5倍。全職業平均の1・5倍を大きく上回っている。

 そうした人手不足による現場のきしみが、介護職員による高齢者虐待の増加につながっているのではないか。

 18年には熊本市の認知症高齢者グループホームで、夜勤中の職員が入所者(88)を殴って死なせる事件が起きた。「認知症への理解不足もあり、入所者とうまくコミュニケーションが取れなかった。待遇面の不満が重なり、鬱憤[うっぷん]晴らしをしてしまった。もっと精神的に余裕を持って介護に臨めると思っていた」。職員は後の刑事裁判でそう述べたという。

 行政や業界はこれまでも介護技術や知識を行き届かせる研修などに力を入れてきた。だが、中には現場まで浸透していない事業所もあるようだ。介護業界では職員の定着率が低く、入れ替わりが激しいとされる。違う業界からの転職で、専門知識・技術や経験が浅いまま現場に入らざるを得ない場合もある。

 事業者には職員教育を強化するとともに、職員がストレスをため込まないような目配りも求められるが、現場の努力や業務効率化だけでは限界があろう。

 職員確保や離職防止への支援とともに、国、県行政は良好な労働環境づくりを目指し、給与面を含めたさらなる介護職の待遇改善策を早急に実施すべきだ。