ゲノム編集食品 正確で丁寧な情報発信を

3月23日 09:25

 遺伝子を効率的に改変するゲノム編集技術で品種改良した農水産物について、厚生労働省の専門部会が、大半は厳格な安全性審査が不要で、国へ届け出れば流通を認めるとする報告書をまとめた。今夏にも食品として販売可能になる見通しだ。

 ゲノム編集は、狙った遺伝子を切断して、生物の機能を高い精度で変える技術。これまでの品種改良は長い年月をかけて交配するなど偶然に頼る側面が大きかったが、ゲノム編集の登場により「育種革命」が起きている。

 国内では大学などで開発が進んでおり、肉付きのいいマダイや、血圧を下げる成分が豊富なトマト、アレルギー物質が少ない卵などが既に生み出された。消費者にも生産者にもメリットのある品種が短期間で開発できるという点では、革新的な技術と言えよう。

 今回、厚労省の専門部会が安全性審査の義務化を見送ったのは、元々持つ遺伝子を欠損させるケース。従来の品種改良や自然界で起きる変化と区別がつかないとの理由で、開発中の食品の大半が該当するという。外部の遺伝子を導入して新たな機能を追加した場合は、従来の遺伝子組み換え食品と同様に安全性を審査する。

 ただ、こうした違いは消費者には分かりにくい。「自然界で起こり得る変化は危険性が低い」との前提に立った結論は、専門家にとっては合理的でも、広く社会的な合意を得られるとは限らない。

 ゲノム編集食品の議論は、昨年6月に閣議決定された政府戦略に盛り込まれたのが発端で、報告書は実質、3カ月ほどでまとめられた。一般からも意見を募集し約700件が寄せられたが、大半は安全性への懸念だった。

 報告書は、問題が起きた際の対応や消費者への情報提供のため、改変で成分がどう変わったかなどの情報も販売前に国に届け出るよう求めている。しかし、届け出に法的な義務はなく、制度の実効性には疑問符が付く。

 消費者の不安に対応するためには最低限、届け出を徹底させ、正確で丁寧な情報を発信する仕組みづくりが必要だ。その上でゲノム編集食品であることを表示するなど、消費者が選択できる環境整備を求めたい。