英EU離脱延期 立場超え膠着状態打開を

3月16日 09:22

 英下院は29日に予定されている欧州連合(EU)からの離脱を1回限り、6月末まで延期することをEUに求める政府動議を可決した。

 英政府は21、22日のEU首脳会議で延期を要請する。一部の加盟国には短期間の延期に対する異論もあるようだが、欧州経済や流通、市民生活に大混乱を招く「合意なき離脱」はEUとしても避けたいのが本音だろう。延期は承認される公算が大きいとみられる。

 とはいえ、期限を延ばすだけでは膠着[こうちゃく]状態の打開は図れない。政府動議は、下院がこれまでに2度否決した離脱合意案を20日までに可決することを延期の条件としている。

 メイ首相はあくまで現在の合意案に基づいた離脱の実現を目指すようだが、離脱後も英国がEU規則に縛られ続ける合意案に対する反発は与野党双方に根強く、すんなり可決するとは考えにくい。現行案に執着したままでは議論が泥沼化し、延期が長期化する恐れもある。

 英議会を見ると、与党内には離脱強硬派がいる一方、2度目の国民投票を目指したり、EUとの関係を一段と重視した離脱案への方針転換を模索したりする動きもある。野党も含め、議会と政府はこれまでの立場を超えて議論を重ね、国益につながる結論を導くべきだ。

 英政府がEUに対する離脱通知を一方的に撤回することもできる。その場合は、下院の解散・総選挙か国民投票の再実施で民意を問う必要がある。国民投票は英国社会の分断を激化させるリスクがあるが、解散・総選挙は一考に値するのではないか。あらゆる方策を検討する必要がある。

 英国はEU域内からの移民増加に伴う不満の高まりなどを受け、2016年の国民投票でEU離脱を決定した。17年3月29日、EU基本契約に基づき離脱をEUに正式通知。離脱条件の交渉を経て2年後に離脱することが決まった。

 さらに英国とEUは18年11月、激変緩和のため20年末まで移行期間を設けることなどを定めた協定案で合意した。

 ただ、協定案には、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理に関し、自由往来を維持し税関検査を回避するため、英国をEU関税同盟に残す条項が設けられている。これに与党保守党の強硬派議員らが強く反発し、下院は合意案を2度にわたり否決。袋小路に陥っている。

 英国では既に、金融業の拠点を欧州大陸に移転する動きが加速するなど経済への影響が表れている。貿易面などに特段の取り決めがない「合意なき離脱」が現実となれば、自動車関税がこれまでのゼロから10%に跳ね上がるなど日本企業への影響も避けられない。

 日本政府は、「合意なき離脱」の回避を英国に働きかけるとともに、英議会とEUの動向を引き続き注視し、進出企業に対する情報提供や支援など、必要な対策をしっかりと講じてもらいたい。