新出生前診断 重い選択支える体制必要だ

3月15日 09:35

 妊婦の血液で胎児のダウン症など3種類の染色体異常を調べる「新出生前診断」について、日本産科婦人科学会の理事会が今月、要件を緩和する案を了承した。

 開業医などでも学会指定の研修を受けた産婦人科医がいれば新出生前診断の検査をできるようにするなど実施施設を広げる狙いだ。

 しかし、胎児の異常を調べることは「産むか産まないか」という命の選別につながりかねない。実施施設が急速に拡大すれば、妊婦の不安をあおり、検査を当然視したり、安易に出産を控えたりする風潮につながる懸念もある。検査を正しく理解してもらう遺伝カウンセリングの充実など、重い選択を迫られる妊婦を支えられるよう体制を整える必要がある。

 新出生前診断は、母体の血液に含まれる胎児のDNAを分析し、染色体異常の確率を推定する方法で、海外で開発された。従来の出生前診断よりも5週早い妊娠10週から検査でき、高い精度で異常を検出できる。

 診断の確定には、わずかに流産の危険がある羊水や絨毛[じゅうもう]の検査が必要だが、新出生前診断は、針を刺すなどして検体を採取する羊水検査などを減らすことができ、母体にも胎児にも負担が少ないとされる。

 しかし、常に中絶につながる可能性があるため、学会は遺伝カウンセリングができる認定施設に限って実施を認めてきた。施設には豊富な知識を持つ産婦人科医と小児科医が常勤し、どちらかは遺伝専門医の資格を持つことが条件となっている。対象となる妊婦も35歳以上で、前の子どもが染色体異常など、胎児に染色体異常の可能性が高い場合に限定している。

 2013年に臨床研究として始まり、大学病院など全国92施設が実施。昨年9月までに約6万5千人が受診し、胎児の染色体異常が確定した妊婦886人の約9割が中絶を選んだ。県内では13年12月から熊本大病院が実施。相談者は年間200人程度、検査を受ける人は6~7割で、陽性率は1~2%程度という。

 今回の要件緩和の背景には、無認定施設で診断を受ける妊婦が多く、遺伝カウンセリングや確定検査もできず、出産に不安を抱いている状況がある。学会は遺伝の専門医の資格を持つ医師は必須とせず、学会が指定する研修を受けた産婦人科医がいて、小児科医と常に連携している分娩可能な施設であれば検査できることにした。

 ただ、重い選択を迫られる妊婦や家族の気持ちに寄り添ったきめ細かいカウンセリングの重要性は変わらない。最善の道を選択できるようにするため、学会指定の研修には遺伝専門医のレベルと同等の質の高い内容が求められる。

 新出生前診断が進んだからと言って、障害や特定の病気を持った人や、その家族らが生きづらさを感じるような社会になってはならない。多様な生き方を認め合い、安心して産み育てられる社会をつくるためにはどうすべきか。国民的な議論が必要だ。