奨学金肩代わり 地方の人材確保につながる

1月22日 09:17

 大学進学などで借りた奨学金の返済を自治体や企業が肩代わりする事例が全国で増えている。人口減少が続く中、経済的に苦しむ学生を支援し、優秀な人材を地方に確保する方策として成果に注目したい。

 日本学生支援機構によると、大学生の49%が何らかの奨学金を利用しており、機構の無利子奨学金を利用した学生の平均総額は237万円。卒業後に15年かけて毎月1万数千円の返済を続けるケースが多いといい、経済的負担が問題となっている。

 一方、熊本県企画課によると、県内大学生の2018年度の県内就職率は46%。県外の大学に進学した県出身者の約7割も、そのまま地元に戻らず人材流出が続いている。熊本に限らず、多くの地方が同様の問題を抱えている。

 こうした地方と学生のニーズをつなごうと、既に全国32府県が奨学金の返済肩代わりを制度化。九州では熊本をはじめ長崎、大分、宮崎、鹿児島の各県が、県内でも荒尾市や球磨村が取り組んでいる。

 熊本県は、就職先企業と折半して肩代わりする新制度を18年度から導入した。大学院修了者に456万円、中小企業の対象枠では大卒者も244万8千円を上限に、県と企業が就職後に10年分割で支給。卒業後3年以内の既卒者も対象とし20年度採用から適用する。現時点で、医療・福祉、建設業、製造業、小売業、不動産業など地場企業40社が応じ、104人分の希望がある。

 ただ、経済的な余力がある自治体や企業と、そうでないところとの格差を生むといった問題点もある。例えば、東京都は都内で介護職に就くことを条件に、600人に最大300万円を支援する。大手企業では、全額支援を打ち出すところも多い。

 これに対し、地方の自治体の多くは限定的な支援にとどまる。中小企業の中には肩代わりに踏み切る代わりに、社員を対象に行っていた海外留学などの社内研修の縮小を検討する社もあるという。

 支援の対象にならない社員との不公平感も課題だろう。熊本県はこうした事態を想定し、奨学金を利用していない学生や県外在住の社会人経験者を対象にした「熊[ゆう]ターン応援枠」も併設。就職1年目に赴任費(20万円)、同5年目に研修費(30万円)を支給するなどして配慮する方針だ。

 就職後、思い描いた職場と現実とのギャップに悩み、離職する若者も多い。厚生労働省によると、大卒就職者の3人に1人が3年以内に離職している。返済肩代わりを理由にした就職がミスマッチを生み、離職者が増える可能性もある。運用には慎重を期したい。

 奨学金返済の肩代わりなどによって若者の経済的負担を軽減し、優れた人材を地元で生かすことは、熊本地震からの復興のためにも意義が大きい。そうした取り組みとともに、地元や地場企業の魅力を高め、若者を引き付ける努力も忘れないでもらいたい。